第8章 騒がしい夜更け
長谷部side
────んっ…
ゆっくり目を開けると
柔らかな布団の上に寝ていた
思い返すと記憶に新しいのは風呂に入って上がり際に主が…
───うぐっ!
だめだ思い出すとまた鼻血がぶり返しそうだ
ふわふわした記憶でまるで夢でも見ていたのかと勘違いしそうだが
「あれは夢じゃない、現実だ…」
誰もいない部屋で1人ぼそっと呟いた瞬間、襖の向こうから入るよー、と控えめな声が聞こえた
「…主!?」
「長谷部っ!?」
頭に思い浮かべていた人物がいきなり目の前に現れて、声が裏返りそうになる
主も俺が起きていると思っていなかったようだ、俺の方を見て驚いた表情をしている
「具合、大丈夫? 逆上せちゃったのかな…」
熱はなさそうだけど、と俺に近づくと心配そうに額に手を当ててくる
この本丸にいる刀剣達は皆主を好いている
そして主は俺達、刀剣に優しい
大好きな主に優しくされたら…、一歩間違えたらどうなる事か
俺も例外ではない
今も、額に触れられただけで───
「長谷部、顔赤くない?…やっぱりまだ調子悪いんだね。」
残念そうに俯く主
「内番で疲れている所に、私がお風呂を勧めて、挙句に長風呂させてしまってこんな事に…。本当にごめんね、長谷部。」
自分の行いを悔やんでいる様だ、申し訳なさそうに視線を落として話す声色は、語尾になるに連れて小さくなっていく