第5章 物音の正体
「兄者!この大きな箱、車輪が付いていて押すと簡単に動くぞ!」
「へぇ、面白いものだね。持ち上げるとこんなに重いのに。」
「なんと!押さえても転しても凹まない! 珍しい材質で出来ているのかもしれない。」
「中には何が入っているのかな。切ったら開くだろうか?」
持ち上げたり、押してみたり、転してみたり…
この兄弟のキャリーケースへの興味は尽きない
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「───おーい!髭切!膝丸!」
ふと、廊下の先から自分達を呼ぶ声がして振り返る
「…あれは、鶴丸か。」
声の主を察して膝丸が立ち上がる
「主が見つかったのかい?」
髭切も膝丸に続いて立ち上がると、鶴丸に向かい問い掛ける
「ああ、見つかったが…──」
玄関先までやってきた鶴丸は、事の経緯を2振へ伝える
「なっ…、主が!」
「弟よ、僕達も向かおう。」
まだ会えてこそいないが、己の主の一大事に表情を曇らせる髭切と膝丸
鶴丸に案内され、足早に主の運ばれた部屋へ向かった