第5章 物音の正体
清光が 開けるか、と手でジェスチャーをする
長谷部が頷き、いざ室内を確認するべく引戸に手を掛けようとした、その時
─────ガラガラッ…
こちらから開けずとも、引戸が重そうに開いた
「「 …!! 」」
僅かなの沈黙の後、長谷部が口を開く
「────薬研…なのか…!?」
部屋から出てきた薬研は驚いたように目を見開いたが、すぐに視線を手元に移す
「…ああ、俺だ。悪ぃが久々の再会を喜んでる暇はないぜ。」
「 …これはっ───」
その光景を目の当たりにした清光は目を見開く
薬研に抱かれているのは小柄な女性…
聞いている情報からして、新しい主だと瞬時に察した
怪我をしたのだろうか、腕には包帯が施されている
主に意識は無く、衣服の所々に付いた血痕が目に付く
何があったと頭の中で思考を巡らすが、皆目見当もつかない
「主…! 一体何が…」
薬研に近付いて、主の身を案じる長谷部
動揺しているのか差し出す手が僅かに震えている
─────── ダッダッダッ
するとそこに、主を捜索していた鶴丸と光忠が合流する
長谷部達を見つけて駆けて来たのだろう、2振りは小さく肩で息をしている
「えっ…!そこにいるのは、主!?」
状況を掴めないでいる鶴丸は、主を見つけて慌てて声を掛ける
「説明は後だ。空き部屋に布団を用意してくれ。応急処置はしてあるが、傷が深い。清潔な手拭いと水、包帯も多めに持ってきてくれ。」
慌てる周囲を宥めるように、薬研は落ち着いた声色で刀剣達に指示を出す
「分かった。こっちに来て!」
指示を受け、すぐさま光忠が薬研を空き部屋へ案内する
薬研の一声を皮切りに、清光、長谷部、鶴丸も対応するべく本丸を駆ける
慌ただしくなるこちらを他所に
玄関先まで来た髭切と膝丸は───────