第5章 物音の正体
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空き部屋は急遽、主の療養部屋として整えられ
薬研によって一通り怪我の処置も終わった
主の容態は安定して、今はスヤスヤと眠っている
「主には早く目を覚まして欲しいけど、目覚めていきなり僕達に囲まれても気が休まらないだろうね…。」
布団で眠る主を見つめながら、光忠が心配そうに呟く
「ここは一先ず、我々は席を外していた方がいいかもしれないな。」
光忠の言葉に、膝丸が続ける
主の傍に座っている長谷部は難しい顔をしてどうするべきか悩んでいたが、小さく溜息をつくと意を決したように立ち上がる
「燭台切と膝丸の言う通りだ。主を驚かせるようなことは避けたい。介抱は医術の心得のある薬研に任せるとして、俺たちは別室で待機だ。」
薬研、頼む と顔を薬研へ向ける
「ああ、主の事は任せてくれ。」
薬研は頷くと、他の刀剣達を見渡した
清光に燭台切、鶴丸は心配な気持ちが表情から伝わってくる
長谷部もきっと一刻も早く主に会いたいだろう、主の身を案じるが故の判断だったと感じる
髭切と膝丸は分かりやすく表には出さないが、どこか表情に陰りがある…
皆、それぞれ色は違うが、主の身を案じているのだ
長谷部の指示を聞き、薬研を除く6振は
名残惜しそうにしながら部屋を後にした
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事の発端となった鶴丸は、案の定、長谷部にしっかりと雷を落とされたのだった