第5章 物音の正体
「じゃあ、僕達も主探しを始めるとしようか。…えっと…。」
髭切が後ろを振り返ると、今しがた合流した膝丸が立っていた
「兄者、俺は膝丸だ! …話は聞こえていた。今、玄関に主の荷物がある。」
そう言うと、膝丸は玄関口のある後方へ視線を向ける
「もしかすると主が荷物を取りに戻るかもしれない…、まずは玄関付近を探そうと思う。」
「そうだね。なら、玄関まで行こうか。」
髭切と膝丸は、鶴丸達とは反対方向へと歩みを進めた
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「まさか主がこんなに早く到着されるとは…!」
「ちょっと計算外だったけど、これだけ準備できたら上等じゃない?」
鶴丸達が主探しをしている頃、本丸の客間では主を迎えるべく、長谷部と清光が支度をしていた
「茶菓子に温かいお茶、着替えに寝巻き…」
忘れているものは無いか、と長谷部は忙しなく準備物を復唱している
「鶴丸さん達、主を迎えに行ったけど随分遅いよね。」
清光は襖を開けて鶴丸達が向かった方角を覗くが、誰かが戻ってくるような気配はない
俺も早く主に会いたいのに、と思わず心の声が漏れる
「鶴丸だけではなく燭台切も共に向かっている。心配はしていなかったが、確かに遅すぎるな…。」
長谷部と清光は目を合わせて頷くと、戻りの遅い鶴丸一行を探しに部屋を後にした
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客間を出て間もなく、長谷部と清光は不審な物音に気付く
─────ガサッ…
布が床を擦るような音─────
一瞬にして緊張が走る
長谷部と清光は目で合図を送ると、物音のする部屋の引戸の前まで忍び寄った