第4章 初期刀
心春side
「初期刀、かぁ…。」
本丸へ向かう途中、蔵での出来事を思い返していた
私の初期刀───
薬研は、私が初めて出会った刀剣だった
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亡くなった先代の審神者という職を継ぐ為
今まで働いていた会社を辞め、
遥々こんな田舎までやって来たが…
「電車もバスも全然来ないし。あ〜、不便!」
ここに比べると、遥か都会で暮らしてたからなぁ
野山が広がり、大きな川もある
ぽつぽつと家もあるが、町という程ではない
見渡せば少し離れたところに ”万屋” と看板を掲げたお店もある
見た目と大きさからして、小さめのスーパーの様なものだろう
「ずっと歩いてるけど、いつになったら着くんだろう。家を見つける唯一の手掛かりが手書きの地図なんて…。」
もっとこう、住所入れて検索ボタン押したら道案内してくれるとかないのかな?それっぽい住所を入れてもヒットしないし…色々古くない!?
スマホの地図アプリも最新なはずなのに役に立たない
審神者についても、詳しく知らされていないし
神様の力を何とかするらしいけど…
「地図からすると、この辺りなんだけどなぁ」
手に持った地図に目を落としながらブツブツと文句を垂れて歩いていると、ふわり、と何かにぶつかったような、通り過ぎたような感覚が身体を巡る
あれ…? 今、何かぶつかった…?
振り返っても何も見えない
だがなんだか靄のような膜のような "何か" がそこにある
手に持っているスマホも圏外なのか、電波がひとつも立たなくなった
怪しさを感じつつ前に向きもどると
急に開けた場所に出ていた
その先には一件、大きな屋敷が静かに佇んでいた