第4章 初期刀
「あ、あぁ、これね。新しく顕現された刀剣、山姥切国広の必要な物を〜と思って、蔵に取りに来たの。」
「! ! …山姥切が顕現されたのか。」
「ついさっきね。今は執務室でこんのすけと話してると思う!後でまた挨拶に行くね。」
驚いたように目を見開いた薬研
「この本丸もまた一段と賑やかになるな。」
いつものキリッとした表情から一転、穏やかな笑みを浮かべる薬研は嬉しそうだった
「───だが…。」
「っ…!」
箪笥に向かって立っていた心春の手を引くと
自分の方へと向かせる
「本丸の刀剣が増えても、大将は俺の事、見ててくれるよな…?」
至近距離で目が合う
少し寂しさを感じる瞳に真っ直ぐ見つめられ、目が逸らせない
手を引く力が弱まると、ふと我に返る
そしてこの状況に一気に恥ずかしさが込み上げる
「なっ、何言ってるの!当たり前だよ。薬研は私の初期刀のようなものだから!何振り刀剣が増えたって、ずっと見守ってるよ!」
なんだかあんまり頭で考えられなくて、思い浮かんだ言葉をそのまま連ねる
「なら、よかった。」
目を細めてホッとしたような薬研
そのまま手を引かれ、ぎゅっと抱き締められる
「心春…。」
私の首元に顔を埋めると、擦り付くように顔を寄せてくる
そんな薬研を私も抱き締め返す
背中を摩ると薬研の着ている白衣から仄かに薬品の匂いがした
薬品だけどなんだかこの匂い、安心するなぁ
いつもの薬研の匂いだからかな…
いつも思うけど、2人になると名前で呼んでくるの、狡い
苗字も含めた真名は、この業のものには教えるなと言われているから、伝えているのは下の名前だけだけど…主呼びが通の中、たまに名前を呼ばれると擽ったい気持ちになる
薬研はいつもはクールで、頼りになる兄貴って感じで、兄弟や他の刀剣達からも頼りにされている
不安な気持ちを表したり弱みを普段は見せないけど、時々こうして二人きりになると、素直に甘えてくれる
こんな所が可愛いなと思うけど、これを言うと本人は怒るから、言えない…