第1章 Story -出会い-
「推測にしかなりませんが…その方が急に術式を持って生まれたのではなく、その方の父上が何百年振りに生まれた相伝を受け継ぐ者だったのでしょう。そしてそれを御三家や他の一族が欲した。そのせいで自由を奪われ精神的に追い詰められ13歳の時に自害したと…」
「…は?自害?13の時?」
13歳で死んでたら唯の父親なわけねーじゃん。
アイツ亡霊の娘なの?
「調べたところにはそうありました。自害した振りをし隠れて生きていたのかもしれません。そして御三家やその力を求めた術者達は自分達が追い詰めた事を隠し、その事実を無かった事のように口裏を合わせているようです」
淡々と語られる話に唖然とした。
唯の父親はそんな窮屈な思いをして生きてきたのかと。
つーかそこまで求められる力なんて聞いた事ねーし。
俺が聞いても知らないを通したのは隠してたからなのか。
フツフツと怒りの感情が現れてくる。
「ホント御三家なんてクソだな」
「悟お坊ちゃま…誰かに聞かれては困ります。五条家の文献にもほとんど記されていなかった事でございます。故にこの事は内密にお願い致します…」
「…わかってるよ。お前が俺に頼まれたからといってタブーを調べたのがバレたらヤバいからな」
御法度くらい理解はしてるけど。
なーんか腑に落ちない。
唯の父親はじゃあいつ亡くなった?
澪はどこまで知ってるんだ?
…駄目だ。話を聞かなきゃ進めそうにない。
「ちょっと出てくる」
唯の父親には気の毒だったが今の心配は唯だ。
その父親の術式を受け継いでいるということで十中八九間違いないだろう。
なら禪院家などの人間になんてバレたらそれこそ連れて行かれる。
実験台にされるかいいように利用されるのなんて決まってる。
俺は足早に唯の家へ向かった。