第1章 Story -出会い-
唯の言っている“可愛いの”が全く見当つかねぇ。
頭上から?マークが溢れそうな俺に全く気付くこともなく唯は左耳に手を添えていた。
「お兄ちゃん見ててっ!…アンロック!」
唯が告げた途端に光が差しー…
小さな何かが出現していた。
「えっ…なっ…!?」
突然唯が起こした現象と現れたアイテムに俺の思考がパニックしていた。
だけどよく見れば鍵…のように見える。
唯はそれを手のひらに収めると俺に近付き、
「見て見てー!可愛いでしょっ!」
満足そうな顔で渡してきた。
手に取ってよく見るが…鍵だ。
鍵にしか見えない。
ふと横の澪を見てみてもニコニコとこちらを見ているだけー…。
あれ?
もしかしてこの鍵みたいなやつ、普通の奴に見えない系?
まだ頭が大混乱中なんだけど…
え?むしろこれ何の鍵?
何処の部屋のですか?
パニックに拍車がかかり、思考回路がショートしかかってきたが、突然ふわっと鍵が消えた。
「あれ?消えた…?」
「すぐ消えちゃうの…。でも可愛いからお兄ちゃんに見て欲しかったの!…ママは見えないんだって…」
しゅんとして俯く唯。
やっぱり見えなかったんだなーって思いつつ頭を撫でて、
「唯、何で出せるようになったのか分かんないけど可愛いの出せたじゃん!唯はやっぱり凄いなっ」
そう言えば俯いて顔がみるみる笑顔になって俺に抱きつく。
あー…ホント妹って可愛すぎる。
世の中のお兄ちゃんはこんないい思いしてんのかなって腹立つけど。
でも鍵は何なのかまた調べてみないとなーって思い、抱きついている唯に声をかける。
「せっかく公園にいるんだし、ブランコでもするか!押してやるよ」
「わーい!押してもらうー!」
ブランコの方へ嬉しそうに走る唯を追い掛けながら澪にひらひらと手を振った。