第1章 Story -出会い-
あの術式が気になった俺はあれからこうやって何度も唯とその母親と会っていた。
とは言っても当時の唯は喋れるわけじゃないから無意識に使う術式を見たりあやしたり、昼寝中は唯の母親と色々話をしたりした。
唯の母親は読み通り非術師だった。
父親は唯が産まれてすぐに亡くなっていた。
父親が呪術師だったんだろうけど、唯の母親である澪さんはそれを語ろうとはしなかった。仕事は何をしていたのかも何で亡くなったのかもそういう空気を察して聞けなかった。
でも苗字が星月夜と書いてセツナというなんて珍しすぎるし、調べれば何か分かるかもと五条家の人間に調べてもらってはいるが中々情報がない。
「……ちゃん!悟おにいちゃんってばっ!!」
「うわっ!!」
うわの空で考え事をしていたからか唯が何度か呼んでいたのに気が付かなかったようで頬を膨らませながらグイグイ服を引っ張られた。
「何でお話聞いてくれないのぉ!」
「あ…悪い悪い。ちょっとボケっとしてたわ(笑)んで、何の話だっけ?」
笑いながら頭をよしよしと撫でると拗ねていた顔が少しずつ笑顔になっていった。
「んっとね、唯ね、可愛いの出せるようになったの!」
「可愛いの…って…なんだ…?」