第4章 Middle Of Nowhereー何も無い場所ー
蝶が消えていく様はあまりにも綺麗で…
その中心に居た彼女は女神のようにさえ見えた。
興奮冷めやらぬままに拍手をすると当然の如く驚く彼女。
月明かりが彼女を照らし、見れば先程の妖艶な感じではなくまだ幼さの残る姿だった。
話をしたいと告げるが凄く警戒されている。
下で待つ旨を伝えて先に建物から出た。
出てきた彼女は鍵の棒のような長物を持っていた。
高専で話を聞いたと告げると緊張の糸が解けたのか穏やかな表情で名を名乗ってくれた。
恐らく悟の知り合いはこの子のお兄さんなんだろう。
兄妹で同じ蝶の術式を使うなんて興味深いな。
そう思い色々と話をすれば自分に自信が無いようで彼女は俯いた。
その様子が何だかとても愛おしくて彼女の方へ手を伸ばし“君は君の力の良さがあるんだから比較してはいけない”と伝えた。
ー…私も悟と比較して焦っていたのが悪かったのだなと自分にも言い聞かせた。
そうしたら彼女から“またアドバイスしてくれるか”なんて言われて。
彼女の成長を見たいと思っていたから嬉しかった。
手伝える事があるなら力にもなりたいと。
連絡先と約束を交わして高専へと戻った。
部屋に戻ろうとすると悟が部屋の前にいた。
「何か用かい?」
「…昼間は悪かったな。傑が知りたい事教えてもいいかなと思ってー…」
「…悟どうしたんだい?君がそんな事いうなんて…ふっ…まぁ気持ちだけいただくよ。私も色々と分かったし見つけたものもあったんだ」
「あんなに知りたがってたのに?見つけたものって何だよ?」
「大事に育てたくなるような花の蕾さ。いつか私の物にできるように強くならないとね」
そう言って“おやすみ悟”と声を掛け自室に入った。