第4章 Middle Of Nowhereー何も無い場所ー
少し歩いて公園のベンチに座った。
すると夏油はどうぞと言ってカフェオレを手渡してくれた。
何て気が利く人なんだろうとキュンとしていると夏油が口を開いた。
「さっきの蝶は見事だったね。とても美しい光景で思わず見惚れてしまったよ」
「そ…そんな…見惚れるだなんて…光栄ですっ…」
夏油さんに言われると照れて顔が赤くなってしまう。
やだ…恥ずかしいな…。
「風を操っていたように見えたけどあれはどういう術式なんだい?」
「あれは…元素というか世の中にある物質の一部から力を借りているんです。風の民とは仲良くなれたから力を最大限使えるんですが他はまだ全然で…」
俯いて答えれば聞いていた夏油が話し始めた。
「民というのがよく分からないけれど精霊みたいなものなのかな?各々個性もあるし性格も違うだろう。それを見極めて歩み寄ればきっと唯ちゃんの力になってくれると思うよ?」
夏油の言葉に“なるほど…”と頷いた。
今度ゆっくり他の民とも話をしてみようと思った。
「そういえば唯ちゃんってお兄さんはいるかい?」
「あ、はい!一人います」
「やはり…そうか。お兄さんは呪術師としてどんな感じなんだい?」
「いやぁ…私なんかと比べ物にならないくらい凄くて強いです。私も強くなりたいのにから回ってばかりで…」
お兄ちゃんに追いつけるくらい強くなりたいのに…。
そう思って俯けば夏油が頭に手を置いて優しく声を掛けてくれた。
「お兄さんはお兄さんだよ。唯ちゃんには唯ちゃんの力の良さがあるんだから比較してはいけないよ…っと少し遅くまで引き止めてしまったね。家まで送るよ」
「ありがとうございます…でもすぐそこなので大丈夫です!夏油さん私頑張ってみます!…またアドバイスとかしていただけますか…?」
「あぁもちろんだよ!私に手伝える事があれば協力させてくれ。また近いうちに会いに来るよ。良かったら連絡先を交換してくれるかい?」
「もちろんですっ!!!」
夏油と連絡先を交換し、お互い家路へと急いだ。
少し汚れたのでお風呂に入り湯船で足を伸ばせば先程の話し方や優しい顔が浮かんでは消えていく。
「もしかして…これが恋…!?やだー…っ!!」
湯船に顔を突っ伏し終始ニヤニヤしていた。