第10章 S級魔導士昇格試験
シャ「あれが天狼島よ」
リリ「しかし…本当に着いて来ちまってよかったのかよ」
シャ「いいのよ…見学するだけだし」
リリ「ウェンディが心配なんだな」
シャ「…私はあんなに反対したのにあの子!!」
リリ「……」
シャ「あれは一週間前のことだったわ」
……………
メス「やぁ…ウェンディ」
ウェ「あなたは」
メス「俺はメスト。ミストガンの弟子だった」
ウェ「ミストガンの弟子!?」
メス「君のことはミストガンからよく聞いている」
ウェ「!!あ、あの…何してるんですか」
メス「雪の味を知りたいのだ…気にしないでくれ」
ウェ「はい…」
シャ「なんなの…コイツ」
メス「力を貸してくれないか」
シャ「それが人にものを頼む態度なの!?」
メス「!!すまん…どうも俺は知りたいことがあると夢中になってしまう癖があるのだ。ウェンディ君の力があれば俺はS級の世界を知ることができる…頼む。力を貸してくれ」
ウェ「え…でも……私なんか」
シャ「ダメに決まってるじゃない!」
メス「……知りたい。冬の川の中というものを俺は知りたい」
シャ「こんな変態につきあっちゃ絶対ダメよ!」
ウェ「でも…悪い人じゃなさそうよ?」
シャ「どこが!!」
ウェ「私…色々と助けてもらったミストガンに何一つ恩返しができなかったし」
シャ「エドラスを救ったじゃない!それで十分よ!」
ウェ「でもそれは…結果的にそうなっただけで……私の気持ち的には…」
シャ「ダメったらダメ!」
……………
シャ「で、結局ミストガンの代わりにメストを手助けするんだって聞かなくなっちゃって」
リリ「それでお互い一週間も口を利かんとはね」
シャ「見かけによらず頑固なのよ…」
リリ「あんたもな…」
シャ「メストがどんな奴かなんて私はどうでもいいの…この試験とかいうもの自体がすごく嫌な予感がするのよ」
リリ「例の予知能力か…」
シャ「どうかしら…断片的すぎてなんとも言えないけどね」
リリ「俺はそのメストって奴の方が気になるがな…」
シャ「え…」
リリ「ミストガンの弟子…なんか引っ掛かる」