【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】
第1章 闇を照らして 祝言
「恐いものは無いんです。ただ、綺麗な身体だったらなぁ。なんて考えていただけです!でも綺麗な身体だったら今ここにはいないでしょうし、万事これで良かったんですよね」
少し翳った表情は一瞬、顔を上げた月奈は普段の笑顔でしのぶに笑いかけた。やや子の発言についても、笑い種にする為ではなく心配の意図からくるものだったと分かれば責めるに責められない。
「大丈夫ですよしのぶさん。杏寿郎様は本当に私を大事にしてくださってます。やや子についてはまだまだ先ですが」
少し意地悪く笑ってみせた月奈にしのぶは「それはもう、お互いに忘れましょう」と苦笑した。
そろそろ居間に戻ろうかと廊下に出た所で、蜜璃の大きな叫び声が飛んできて月奈としのぶは顔を見合わせた後慌てて居間へと飛び込んだ。
「蜜璃さん!?」
し「甘露寺さん!!?何が...」
あったのか、と問う前に真っ赤になった蜜璃と驚いたのかパチパチと瞬きを繰り返す杏寿郎が目に入り二人は首を傾げる。祝言の計画で赤面で叫び声を上げる箇所などあっただろうか、と。
煉「うむ、やはり発端は胡蝶だな!」
状況を把握しようとしていた月奈としのぶは、杏寿郎の突然の発言に「はい?」と声揃えて聞き返してしまう。
煉「文で詳細を伝えていなかったこちらが悪かったな!どうやら誤解を招いたようだ。まさか月奈が身篭ったことが理由だと...」
「わぁぁぁぁあ!!きょ!杏寿郎さんなんてことを!!」
し「甘露寺さん!言って仕舞われたのですか!?」
蜜「ご、ごめんなさいしのぶちゃーん!!つい、するっと口から出ちゃったのよー!」
祝言が早まるのは月奈が杏寿郎との子を身篭った説、先程話し合って片付けた冗談話がまさかここに来て再浮上すると思って居なかった月奈としのぶは青ざめる。
杏寿郎がスっと立ち上がった瞬間、流石と言うべきだろうか、月奈の隣に居たしのぶは、蜜璃の腕を掴むと玄関へと続く廊下を走り去った。残された月奈は唖然とし、ただただ立ち尽くしていた。