【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】
第2章 闇を照らして 初夜*
お互いが求めていた。それでもすれ違ってばかりだった。
ようやく結ばれた気持ちを言葉にすることで月奈の中で何かが溢れてしまった。
「月奈...?」
なかなか離れない月奈の背を撫でると、ゆるゆると腕の力が緩む。灯りを弱くしている部屋ではあるが、夜の任務を主とする杏寿郎にとっては月奈の表情を見るには十分な明るさだった。
「無理をさせたか。すまん」
身体を離し現れた月奈の表情に杏寿郎は驚いたが、月奈は首をゆっくりと振った。
「杏寿郎様とこうして結ばれて幸せで...」
「これは嬉し涙だったか。この日を待っていたのは俺もだ、ようやく...月奈を捕まえた」
頬を撫でると月奈が流した涙で指が濡れる、だが月奈は悲しそうな表情ではなく笑っていた。
「これからはずっとお傍にいます。だから...必ず帰ってきてください」
「あぁ、約束しよう」
杏寿郎がゆっくりと月奈の唇に口付けを落とすと、再び杏寿郎が動き出す。障子の隙間から差し込むのは月の光、まだ夜更けだと分かる。
ーまだ、夜明けまで時間は長い。
互いが待ち望んだ今日ぐらいは欲に溺れても良いだろうか、誰も止める者は居ないが杏寿郎は一人、心の中で自身に問う。常に己を律し柱として務めてきたが、愛する人間の前ではただの男になってしまう。
自身の腕の中で鳴く声音に、どれ程欲を吐き出してもすぐに湧き上がってしまう。きっと明日、月奈は起き上がれないだろう。そうは思っても、留まる所を知らぬ自身の欲に杏寿郎は自嘲の笑みを零した。
何度目か分からない絶頂に月奈が意識を手放したのは、空がしらみ始めた頃。その姿に杏寿郎がやり過ぎたと後悔したのは言うまでも無かった。
初夜編【完】