【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】
第2章 闇を照らして 初夜*
祝言の後はいつものように煉獄家に帰り、いつものように過ごした。違うのは夫婦になったということ。
そして夫婦になったということは、つまり...
「あの、杏寿郎様...その」
「心配するな、初夜について胡蝶から聞いたのだろう?それは必ずしも今日でなくてはならない、というわけではない」
そう言われた月奈は拍子抜けだったのか顔を上げて目をパチパチと瞬かせた。どういうことか問いたげな月奈に杏寿郎は思わず苦笑した。
「初夜、というのは夫婦になった初めての夜というだけだ。確かに子を授かろうとそういった行為に至る夫婦は多いと聞くが...」
「わ、私は今日かどうかと心配しているわけではありません!」
慌てて声を上げた月奈はハッとして口を押さえる。杏寿郎は首を傾げて「では、なんだ?」と聞き返すと、うっと詰まったあとに月奈はポツリと小さな声で呟く。
「妻として杏寿郎様に満足して頂けるか気掛かりで...」
「よもや!気にするのはそこだったか!...では、どこまで月奈に触れても良い?」
ゆっくりと伸ばされた杏寿郎の指先が触れた頬に熱が集まるのが分かる。それと同時に感じ取った感触に月奈は少し驚いた。
(杏寿郎様の手が...震えてる)
もしかしたら、杏寿郎も...月奈はそう感じた瞬間、先程まで波立っていた心が不思議と落ち着いていく。
「...どこまででも、触れてください。杏寿郎様」
恐くないと言えば嘘になる。でもこの手、この人にならきっと大丈夫。そう思えた月奈は杏寿郎に手を伸ばす。
「妻となった実感をくださいますか」
ー女のほうが強い、確かにそうだな。宇髄。
月奈も恐くないはずがない。
過去を知る杏寿郎にとって、自身が触れることで月奈を更に恐がらせてしまうのではないかと危惧していた。
「恐く、ないのか」
少し掠れた声で問えば月奈は少し笑った。
「震えるほどの緊張も恐れも、同じ程感じてくれる杏寿郎様ならば大丈夫です。一緒、ですよ」
一緒なのだと言われた瞬間、杏寿郎は月奈を強く抱き締め声を漏らして笑う月奈の唇を塞いでいた。