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【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】

第2章 闇を照らして 初夜*



盛大な祝言を終え、時刻は夜。
月奈は廊下を歩きながら杏寿郎の部屋へと向かっていた。

「心臓が口から出てきそう」

ボソリと呟いた言葉を聴く者はおらず、一向に熱が冷めない頬を手でパタパタと仰ぐ。お風呂上がりだから、それだけではない熱が篭もる身体に夜風が気持ち程度の冷気を送ってくる。

今日の昼に月奈はようやく杏寿郎の妻となった。
祝言の準備に追われ忙しない日々が続いていたからか、槇寿郎や千寿郎は早々に床に就いているようで随分と静かな夜。

祝言を終えた夜に控えるのは初夜だ。
そういった事柄に疎い月奈は祝言前にしのぶから色々と教わったが不安だった。

「月奈」

名を呼ばれ顔を上げると、縁側に腰掛け手招きする杏寿郎が居た。普段と変わらぬ杏寿郎に月奈は少し安堵し隣に腰掛ける。空を見ると月が明るく光っていた。

「今日は月が明るいですね。日中も天気が良くて本当に良い一日でした」

夜は少し冷えるが、空気が澄んで星空が綺麗に見える。まるで星が降ってきそうな程ハッキリとした空に月奈は笑みが溢れる。その横顔に杏寿郎も笑みを浮かべた。

しばらく黙って空を見ていた二人だったが、湯冷めしたのか月奈が小さくくしゃみをしたことで杏寿郎が立ち上がった。

「身体が冷えたか。そろそろ部屋に戻ろう」

そう言われ月奈はビクリと肩を揺らす。いつものように眠るわけではない事を分かっているのだ、穏やかになっていた心音が杏寿郎に聞こえてしまうのではないかと思う程にうるさく響いてくる。

何か言わなければ、そう考えても何も思い付かず月奈は縁側から動けずにいる。小さく震える肩は恐れか緊張か...杏寿郎は苦笑しながらも手を取り月奈を立ち上がらせた。俯いたままの月奈だったが、流れる髪の隙間から覗く首筋や耳は赤く染まっている。

月奈の手を引いて部屋に入ると行灯の柔らかな光が室内を照らしている。月奈を座らせるとその肩に羽織をかけ杏寿郎は真正面に座った。

「ありがとうございます...」

「新妻を結婚早々に風邪を引かせたとなれば胡蝶に怒られてしまいそうだな!」

新妻という言葉に月奈はなんだかむず痒くなる。祝言を上げて妻となったのは今日だ、実感は未だ湧かない。
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