【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】
第1章 闇を照らして 祝言
し「そろそろ行きましょうか」
蜜「しっかり師範の元へ送らなきゃ!」
そう言って差し出された二人の手をしっかりと握り返した月奈は、ゆっくりと立ち上がるとお館様の元へと向かう。一歩一歩、廊下を進むとふと思い出す。
(ここを歩いたのは弟が鬼殺された以来...。あの時の辛い気持ちとは違う、死ぬ為ではなく生きる為に私は歩いている)
たった一人で歩いたあの日とは違い、自分の手を引く蜜璃としのぶの姿が前を歩いている。親が手を引くはずの道中を二人に頼んだのは他ならぬ月奈自身だった、身寄りが無いことは周知の事実だった為はじめから杏寿郎と共にもしくは、師である長谷に手を引いて貰うという選択肢もあった。
けれど、自分の弱さも強さも愚かさも全てを知っているこの二人に手を引いて欲しいと月奈は思った。
(背後から闇が追ってくる感覚に襲われていた、気を抜けば飲み込まれそうだった。けれど今日はこの二人が導いてくれる)
生きたいと願うこの道の先、共に生きると決めた愛する人の元へ。
し「お待たせしました、煉獄さん」
蜜「師範の羽織袴姿、素敵だわ!ほら、月奈ちゃん!」
綿帽子を被った月奈はゆっくりと顔を上げる。少し先に立つ杏寿郎はいつもの隊服ではなく紋付羽織袴を身に付け悠然としていた。二人の声に振り向いた杏寿郎と視線が合い月奈はどきりとする。
煉「うむ!二人共すまなかったな!」
し「いえ、では私達は大広間で待っていますね。月奈、また後程」
「あ、ありがとうございました!」
二人が手を振りながら廊下を歩いていき、月奈はちらりと杏寿郎に視線を向ける。
(蜜璃さんの言う通り、本当に似合ってるわ)
自然と頬が赤くなるが、綿帽子に隠れているので杏寿郎には見えないはず。
煉「月奈、大丈夫か?」
俯いたままの月奈が杏寿郎の言葉にコクコクと頷く。その動きで少し覗いた白粉を纏う頬が赤くなっていることに杏寿郎は気付いた。緊張しているのだろうか、そう思った杏寿郎は月奈の両手を取ると優しく声をかけた。
煉「そう緊張しなくても大丈夫だ。俺がいる」