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【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】

第1章 闇を照らして 祝言



あ「お館様」

障子を開くと少し暖かさを含み始めた風が吹き込み、部屋に篭っていた重苦しい空気を外へと押し出していく。部屋の中心に敷かれた布団に横たわっていたお館様と呼ばれた耀哉は目を開く。

館「あぁ、良い天気だね。子供達の準備は出来たかい?」

あ「もう間もなくかと」

妻、あまねの手を借りて身体を起こした耀哉。身体は病に蝕まれ自力で起き上がることすら出来なくなっていたが、包帯を巻かれた顔には変わらず穏やかな笑みが浮かべられている。

館「私の分まであの子達の姿を見ておいてくれ、あまね」

白く濁ってしまったその目では、目の前の妻の顔すらハッキリと見ることすらままならない。あまねが頷いたその時、襖の向こうから準備が完了したと声がかかった。





蜜「ひゃぁぁ...!月奈ちゃん、とっても綺麗だわ!」

赤らめた頬に手を当てて喜んでいる蜜璃、その隣には微笑んで頷くしのぶが立っている。白無垢に身を包んだ月奈は、気恥しそうに笑った。

「ありがとうございます。蜜璃さん、しのぶさんが引き受けてくれて嬉しいです」

し「こちらこそ、私達に頼んでくれて嬉しいですよ月奈」

蜜「そうよ、本当に嬉しいわ!それにお館様のお屋敷で、なんて素敵だわ」

普通であれば煉獄家で挙げるはずの祝言。しかし柱として報告をした時に病状が思わしくないことを感じた杏寿郎にお館様はとある提案をしていたのだ。

「まさかお館様がここで祝言を挙げる提案をしてくださるとは思いもしませんでした」

(お身体を起こすことも難しくなってしまったお館様にこの姿を見せる為にはこの方法が一番良い。それに...)

「柱の方々が参列してくださるならここが良いだろうとお館様は勿論、煉獄家の皆様も了承してくれましたし」

目の前に立つ二人は普段通り隊服に身を包んでいる。本来ならば参列者は慶事用の着物を着るが皆は鬼殺隊の人間、隊服が正装なのだ。しかし、隊服の人間が多く集まる姿は街の人間の目には異様な光景に映るだろう。

(ただでさえ非公認の組織だもの、悪目立ちしては良くない。ましてや鬼はこちらの事情を汲み取ることなどしてはくれない)

開け放たれた障子から見える空は青く晴れ渡っている。夕刻から開かれるはずの祝言や宴だが、鬼の活動時間である夜は任務がある為に異例な朝からの祝言になった。
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