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【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】

第1章 闇を照らして 祝言



煉「俺がいなかった場合?」

比較とは比べる物が無ければ出来ないもの。杏寿郎だったら、月奈だったらと考えられるのはその人が自分の中に居るからだ。

「誰と比べても私にとって杏寿郎様は杏寿郎様。その姿、声、仕草全てで杏寿郎様なんです。誰かが取って代わったとて杏寿郎様にはなれません」

ふわりと微笑んだ月奈に杏寿郎は心臓がドキリと跳ねるのを感じた。

「私は貴方が好きなのです、他の誰でもない貴方が。きっと、救って頂いた時にこうなることが決まっていたのかもしれません」

煉「それが決まっていたならば、藤の花の屋敷で休んでいた俺も何かに呼ばれていたのかもしれんな!幼い少女だとばかり思っていたが...」

ー俺の方が諭されるようになってしまった。女性の精神的な成長は早いと聞いた事があったが。

参った、とばかりに微笑んだ杏寿郎。悩んでいた問題が恐ろしく小さく、些細なことに思えて心が軽くなった気がする。そうだ、どれだけ人の気持ちを予測しても確実な物など無いのだ。月奈の心中は月奈だけ、杏寿郎の心中は杏寿郎しか分からない、だから人は腹を割って話す。

「不安は、消せましたか?」

煉「あぁ、自分の狭量に呆れるばかりだ!不甲斐ない!」

「それも杏寿郎様です」

落ち込んでも顔を上げて前を向く、その姿が月奈は好きだ。けれどたまには休んで欲しい、そして自分が杏寿郎にとって休める存在になりたいと思う。

「杏寿郎様の弱い部分が少しだけ見れた気がして嬉しいです」

「むぅ!?」

不甲斐ないと言ったなりに、弱い部分と言われた杏寿郎。不安が解消されたはずなのだが...。

ー不甲斐ない部分を見れて嬉しいとは一体。やはり人の心中はよく分からん!

弱味を指摘されるという若干のショックを感じた杏寿郎だったが、目の前でホッと安堵した表情を見せる月奈にまぁいいかと思えて肩の力が抜ける。どうやら緊張していたようだと気付いたのはその時だった。

ーそういえば自分の気持ちや考えを近い人間に話したのはいつ以来だろうか。

驚いたような表情の杏寿郎に月奈は首を傾げたが、少しして穏やかに笑った杏寿郎に「もう大丈夫そうですね」と呟いて同じように笑った。
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