【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】
第1章 闇を照らして 祝言
雅「俺が月奈さんを嫁に欲しいと言ったんですよ、炎柱様に」
だから決闘になりました。
さらりと言われた言葉に月奈は混乱し始めた頭の中を整理する。
(雅雄様が、私を嫁に?その許可を杏寿郎様に取ろうとした?そういう事?)
雅「ですが、これで諦めが付きましたので気にしないでください」
諦めた、という雅雄にホッとした月奈。鍛錬場の扉に手をかけた雅雄は「そうそう」と振り向いた。
雅「この場は諦めますが、月奈さんが炎柱様を見限るようなことがあれば俺の所にきてくださいね」
煉「なっ...!」
ニコリ、ではなく不敵と言うような笑顔で去っていった雅雄に全員が呆然と佇んでいた。
宇「派手にすげぇ奴だな。鳥肌たったぜ?」
し「宇髄さん...大丈夫ですか、煉獄さん?」
何故か嬉しそうな天元に、絶句していたしのぶは意識を戻すと杏寿郎に視線を向ける。そこには立ち上がりかけた状態で止まった杏寿郎がいた。
「と、とりあえず解散、でしょうか」
月奈が発した一言に異を唱える者はおらず、何とも言えない空気の中各々解散となったのだった。
「杏寿郎様?」
余程の衝撃だったのだろうか、帰宅したものの放心状態の杏寿郎に月奈は心配になる。それと同時に少し不満でもあった。
「私が杏寿郎様に愛想を尽かすと思っているのですか?」
ポツリと呟いた不満、それは自身が信用されていないのではないかという不満だった。見限ったら俺の所においで、雅雄が言ったことを真に受けるほど自身は馬鹿ではないと思う。そもそも見限ることがこの先あるとは思えない。
「寧ろ、私が愛想を尽かされる側では...」
煉「俺から愛想を尽かすことは無いな!」
突然響いた杏寿郎の声に月奈はビクリと肩を揺らした。どこから意識が戻っていたのだろうか。
「随分長く放心されていましたが、大丈夫ですか?」
煉「朝霧少年の発言が衝撃過ぎて言葉にならん!」
ですよね、と月奈は苦笑したが杏寿郎は至極真面目な表情で月奈を見つめ返す。
(やはり信用されていないのかしら。私が愛想を尽かすかもしれないと思われているのかしら)
煉「ずっと考えていた事ではあったが、図星を指されて驚いてしまった。なにせ一度は他所に嫁ぐ選択をさせたような男だからな」