【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】
第1章 闇を照らして 祝言
雅「俺なら...俺なら傷付く前に守る!それなのにどうして力を持つ炎柱ともあろう貴方は...っ!」
雅雄は顔を顰めて木刀を振るう。しかし杏寿郎は表情を変えること無く攻撃を受け流していく。それすら雅雄にとって腹立たしく感じてしまう。
雅「力がある人間が彼女を守るなんて当然のことでしょう!情があるならば何を置いても彼女が優先...」
受け流されていた攻撃、防戦一方だった杏寿郎の体幹が動き雅雄の一撃を強く弾いた。突然の事に雅雄は肩で息を吐きながら離れた位置で再び構えを取る。
室内がピタリと静かになり、外にいる月奈が障子に耳を当てようとした瞬間大きな声が響いてきて思わず「ひぇっ」と声を上げてしまった。幸い、豪快に笑った杏寿郎の声で雅雄にも月奈の声は耳に届かなかった。
煉「何を置いても、か!鬼殺隊士として鬼と対峙してもなお、それが優先か?」
雅「それは...」
静かに問われた雅雄は言い淀む。鬼に喰われる危険に曝された人間を前に愛する者の危険を知らされた時、自身はどちらを選ぶのか。否、選べるのか、と。
煉「俺達は鬼を滅し人間の命を救う為に日々任務に就いている。そして、人の命は皆等しい。命の選別なんてものは我々には出来ない」
杏寿郎の言葉に月奈は以前同じように諭された事を思い出す。鬼殺隊士の命より柱である杏寿郎の命が大事だと、無限列車の任務後に言ってしまったあの時。
煉「己を滅して戦え。目の前に助けられる命があるならば手を差し出せ、けれど皆の命が救える等と驕っては自身の命を落とすことになる」
雅「では、炎柱様は月奈が危険な状態の時、目の前の一般人を優先するのでしょうか?」
煉「勿論、目の前の命を優先する!鬼の手から人々を守る、それが柱である俺の責務だ!」
当たり前だ!と言わんばかりに素早く答えた杏寿郎に雅雄は目を丸くした。それでは月奈の命を軽く扱うのではないのかと。
(当然の答えだわ。それに...)
煉「それに、月奈は守られて良しとする女ではないだろう!そんな人間ならば鬼殺隊に入る等と言わない!目の前の人間を差し置いて月奈を守ろうとすれば、追い返されるだろうな!はははは!」
「ちょっ...!!?」