【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】
第1章 闇を照らして 祝言
煉「うむ、それはすまなかったな!しかし俺も胡蝶から止められていた、朝霧少年もだろう?」
杏寿郎と話しているのは雅雄だと気付いた月奈は少し嫌な予感がした。しのぶが止めていた、という言葉にこの予感は的中しているように思う月奈は困ったように天元を見るが、先程同様の視線が返って来るのみ。
(黙って聞く、私がしていいのはそれだけなのね)
はぁ、と溜息をついた月奈は視線を落とすと二人が話す声に再び耳を傾けてこの後の展開を想像する。
(手合わせがどうの、って以前雅雄様が言っていたような記憶が…。でもどうして今日なのかしら)
もっと前でも手合わせする機会はあっただろう、確かに杏寿郎は忙しい、その傍らで階級が上がった雅雄もまた忙しく任務に勤しんでいた。
(機会が合わなかった、それが今日偶々合ったということなのかしら)
雅「…蟲柱様からお聞きしたのですか?それともとっくの昔に俺の本心に気付いていらっしゃったのでしょうか?」
煉「両方だ!しかし、少年の本心は如何せん探り辛くてな。俺に対する反抗心なのか、はたまた…どちらとも確信が持てなかった」
雅「そもそも俺は眼中に無かったのでは?随分な余裕をお持ちですね、炎柱様は」
ピリッと空気が張り詰める。廊下に居た月奈は、その気配に思わず寄せていた耳を障子から離した。
(雅雄様の本心…しのぶさん…何の話?)
煉「…余裕があるように見えたか?それならば少年の目はとんだ節穴だな!」
雅「そういう貴方の態度が不安に繋がっているとは思わなかったのですか!そうやって開いた隙間に他の男に奪われて、こんなことになる前に俺が何とかすることが出来たんじゃないかと常に思っていましたよ!」
張り詰めた空気が震えた。木刀がぶつかりあう音だろうか、竹刀よりも重い音が空気を揺らす。二人が何の話をしているのか気付いた月奈の前に天元が腕を出した、入るなと首を振る天元に月奈はキュッと唇を噛んで中に入りたい衝動を必死に抑えた。
(他の殿方に嫁ぐことも鬼殺隊を去ったことも全て私自身の選択。間違ってはいたけれど、決して誰かの強制ではなく自分自身の行動よ!)
月奈が杏寿郎の元を去った日から、どのように過ごしたのか詳細は聞いていない。否、原因を作った自分が聞くものではないと思っていた。