【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】
第1章 闇を照らして 祝言
「なんだろう」
ここ暫く杏寿郎が任務に忙しい為、蝶屋敷の仕事を優先していた月奈は日を経るごとに感じる視線に違和感を感じていた。思わず呟いてしまうほどに。
(何か失態でもしたかしら?そんなはずは…)
う~ん、と唸っていた月奈は肩を叩かれる。
「あれ?天元様、どうされました?」
宇「よォ月奈!久しぶりだな!」
蝶屋敷で働いているからか月奈は咄嗟に天元の体に視線を巡らせるが、どうやら怪我でここに来たわけでは無さそうだ。入院している誰かの見舞いかと考えたが…
宇「ちょっと俺に付き合え!どうせ煉獄は今日もド派手に任務だろ!よし、行くぞ!」
ニヤリと笑った天元は、むんずと月奈の襟首を掴むと月奈の返答を聞かずして廊下を引きずりとある場所へと向かって行った。
「天元様!?ちょ…っ!?」
筋肉隆々の天元に対して叶う筈も無く、月奈は何も聞けないまま引きずられる他なかった。抱えられるような状況でなければどうせ蝶屋敷から連れ出されることも無いだろう、そう思って静かにしていた矢先に天元の脚が止まる。
(…鍛錬場?)
顔を上げた月奈は、目の前にある扉を見て首を傾げる。鍛錬でもしてくれるのだろうか、と思い天元に視線を向けると「静かにしろよ?」と言われる。返された視線は至極真面目な光が見え、月奈はコクリと頷いた。
(これは、所謂盗み聞きでは…)
誰が居るのか分からない状況で盗み聞きをすることに抵抗感はあるものの、天元がここから動かない以上月奈も離れるなということだ。つまり、聞く必要があるのだろう。
ゆっくりと室内の様子に耳を傾けた月奈は耳に届いた声に「あれ?」と小さく声を漏らす。どうやら中に居るのは杏寿郎のようだ。
(…誰かと話してる?今日は任務だって聞いていたけれど、今日は近場なのかしら)
鬼殺隊の任務といっても周囲の警備の日もあれば、遠征も少なくない。鬼が出たとなればどこへでも鬼殺へ向かう組織だ。ただ、柱である人間は鬼殺隊の中でも最高位の力を持つ為多くは警備より討伐が多い。その柱が周辺警備となれば、鬼による大きな被害が入っていないということ。
雅「ようやくお時間を頂けましたね。随分待ちました」