【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】
第1章 闇を照らして 祝言
煉「よそ見は危ないぞ!」
「杏寿郎様!申し訳ありません!……ん?」
慌てて離れようとしたが、何故か杏寿郎の腕はピクリとも動かず月奈を留めたままだ。訳が分からずしばらく杏寿郎の腕の中で考えていたが、聞こえる心音と杏寿郎の香りに包まれ「まぁいいか」と思考を放棄した月奈はそのままポスンと抱き着いて目を閉じる。
心地良い呼吸の音にウトウトとし始めた時、突然頭上から降ってきた言葉にバチリと目を開くことになった。
「え?」
煉「む?聞こえなかったか!」
いや、確かに聞こえた。聞き間違いかと思ったからつい聞き返してしまったのだ。
「いえ、え?朝霧…様?」
煉「あぁ、今日道場でひと悶着あったようだな!腕の鬱血は朝霧少年に掴まれたものか?」
そう言ってスルリと袖を捲られて月奈は初めて気付いた。腕には確かに掴まれた痕が赤く残っている。
(ひと悶着といっても…)
「転びかけたところを助けて頂いただけですよ?派手に転びかけたので掴む力が強かったのでは?」
煉「…そうかもしれんな!その時に変わったことは無かったか?」
何故そんなことを聞くのだろう?と頭の中で疑問が浮かんだが、月奈は真面目に思い出してみる。
「…そういえば、雅雄様が少し苦しそうでした。まるで怒っているようにも見えたのですが。それがどうかしましたか?」
あの時の雅雄の表情はなんだったのだろうか。
そう問うべきかと顔を上げると杏寿郎が随分と厳しい顔をしている。自分が何かしたのかと月奈は不安になったが、それに気付いたように杏寿郎はいつものように笑って見せた。
煉「いや、大丈夫だ!胡蝶から薬を預かっている、風呂上りに塗るようだ」
この時、おかしなことに気付かず月奈はあっさりと頷くと「では後程お伺いします」と部屋へ行く承諾をしてしまった。先に塗り薬を受け取っておけば話は済んでいたのでは?と気付いたのは風呂から上がった時だった。
更にもう一点、廊下を歩きながら気付く。
「どうして腕が鬱血していることを分かっていたのかしら。それに雅雄様が絡んでいるって…」
(あれ?しのぶさんから薬を預かった?)
考えれば考える程におかしな点が現れ月奈は混乱した。分かったことは二つ、しのぶが杏寿郎と会った事と杏寿郎は全て気付いているということだ。