【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】
第1章 闇を照らして 祝言
し「こちらは大丈夫ですから、アオイの所に行ってやってください」
「はい!あ、雅雄様、助けて頂いてありがとうございました!」
パタパタと走り去る月奈の足音を聞き届けたしのぶは俯いてしまった雅雄に向き直ると溜息を吐いた。
し「...雅雄君。お気持ちは分かりますが、一線を越えてはいけませんよ。いくらあの状況が不可抗力と言えども、です」
雅「...いつからいらっしゃっていたんですか」
さぁ。と言うように肩をすくめたしのぶに、雅雄はようやく肩の力を抜く。人は時として愚かと分かっていても行動に移してしまうことがある。そう、愚かと分かっていても。
し「月並みですが、世の中には多くの女性がいます。ましてや雅雄君は人気なのですから...」
雅「それを言うならば炎柱様も同様では?」
鋭い遮りにしのぶは目を見開く。
雅「名家に産まれ、柱という名誉ある地位を拝命している。あの人こそ沢山の女性からそんな話はあったはずでしょう。一度でも他の男に渡せたならば...二度目だって」
雅雄が最後まで言う前に、大きな音が道場内に響き渡った。
音の正体は、しのぶが背丈30cmは違うのではないかと思われる雅雄の足を払って引き倒した音。あっという間の出来事に雅雄は呆然としている。
し「煉獄さんに対して何かを言うのはご勝手になされてよろしいですが、月奈の心境を知らない他人は口出しを弁えるべきかと私は思いますよ」
床に転がったままの雅雄の傍らにしゃがみ込んだしのぶは笑っている。確かに笑っている、しかし目は冷たく光っている。
怒っているのだ、その静かな怒りに気付いた雅雄は自分が口走った言葉にギリッと奥歯を噛み締めた。
ーこんなのタダの妬み嫉み。それに重ねて俺は何を言おうとした...
し「少し頭を冷やしてから部屋に戻ると良いですよ。ただし、無理はいけませんよ、傷に障りますからね」
引き倒した私が言うのもなんですが、と呟き笑ったしのぶに思わず雅雄は月奈を重ねてしまう。しのぶの言葉は先程月奈から言われたことだった。
雅「蟲柱様、すみませんでした。ありがとうございます」