第7章 冷たい宅配便/小さな科学者と
哀ちゃんが借りた上着の前を開けると、光彦を後ろから包み込む様に抱き抱える
察したオレは光彦の袖を伸ばし冷えきった手を中に入れてやり、哀ちゃんと光彦を一纏めに上着のチャックを閉めた
「元太、歩美ちゃん、光彦を挟むように座ってくっつきながら声をかけ続けられる?」
「うん!」
「おしくらまんじゅうだな!?」
押しはしないが、法則は同じ様なもんだ
意識さえ戻ってくれれば、少し安心できるんだけど…
「コナン、オレ達は急いで脱出方法見つけるぞ」
「あぁ、言われなくても考えてるさ」
と言っても、どうすればいいんだ…
次に扉が開いた時にオレが囮になるか?
いや、大人2人相手はこの身体では無理だ…コナンと手を組めば隙を作るくらいはできるかもしれないが、光彦があの状態じゃ運び出すのも一苦労だ
全員身体が冷えて思うように動かないだろうし…
「光彦、目ぇ覚ませ!ケーキ食うんだろっ?」
「そうだよ!横浜から届くんだから、みんなで食べようよ!」
声をかけ続けてくれてる2人だっていつ低体温症になるかわからない
「おい灰原、博士んちに届くケーキって横浜からなのか?」
「えぇ、私達の帰宅時間に合わせて時間指定してたらしいけど…今日は学校の都合で早い下校だったから…」
哀ちゃんからの返事をもらうと、コナンは少し考えてから荷物に貼ってある伝票を1つずつ確認し始めた
「光彦!」
「起きたー!」
2人の声に光彦を見ると、意識が戻り顔色もよく、目をまん丸にしていた
目が覚めて哀ちゃんとこんな体勢になってたら驚くのも無理はないけど、早めに気が付いて良かった…
「悪いわね、私のせいでこんな目にあわせちゃって。じっとしてなさい、今温めてあげてるから」
「あ、はい!恐縮です!」
あれ?顔の赤みが戻ったように見えるのは照れてるから?
どちらにしろ、丁度よく身体も温まりそうだな!
「で、コナンは何探してるの?」
手伝うよ、と声をかけると、既に目当ての物は見つかったようで、その荷物を近くに持ってきた
「あいつら時間指定で二丁目に行くって言ってただろ?」
ほら、と見せられた荷物の伝票には「2丁目22番地阿笠博士様」と書かれ、オレ達がさっきからずっと待っているケーキが入っているようだった
「おーっ!食べるのか!?」
いやいや元太よ…
「バーロ、今度はこいつにメッセージを仕込むんだよ!」