第13章 ハロウィンの花嫁
あの爆弾犯が向かった部屋の先は、他のフロアと同じ構造であれば非常階段へとつながっているはずだ
他に仲間がいる可能性もあるけど、だとしても零に追われた奴ならばそのまま逃走するに違いない
「お前は行かなくて良いのかよ」
爆弾に繋がれたコードを一本一本確認しながら松田が言う
そんな松田に背を向け、自分達が入ってきたドアと、この部屋の奥へと繋がるドアのどちらもが視界に入るよう構えた
右手には工具の中から拾った長めの鉄パイプ
何もないよりはマシだ
「零なら大丈夫。それに今優先すべきは爆弾の解体。零なら松田を頼むって言うはずだから」
「そりゃどーも」
爆弾犯を捕まえるのはもちろんだけど、松田が爆弾を解体できなければ被害が出てしまう可能性だってある
零は松田が解体に集中できるように上手く立ち回ってくれているのだろう
だったら自分は松田が後ろを気にせずにいられるよう守りを固める
爆弾犯の情報が何も無いこの状況ではこれが最善だと思った
“パンッ…パンッ…”
“バンッ…”
“ズドンッ…”
遠からずして銃撃音や物凄い破壊音が聞こえる
ドアか何かを蹴り破る音だろうか…
ひとつは下の方から聞こえた気がする…
「ありゃ激しくやってんな」
パチンッと爆弾のコードを切りながら松田が苦笑いを浮かべる
それと同時に今度は足音が聞こえてきた
階段を駆け下りているであろうその足音は徐々に近付いて来る
これは…零の足音じゃない!!
右手にギュッと力を入れ臨戦態勢へと入る
音を辿って誰かが入って来るであろうドアに正面を向くと、スッと現れるペストマスクの爆弾犯
銃はこちらに向けられていて、いつ撃たれてもおかしくない状況だ
こいつ…零を撒いて来た…?
直ぐさま松田を隠すように位置をズレる
銃を相手に鉄パイプで何ができるかはわからないけど、盾くらいにはなれる!
「邪魔だどけェ!」
「おわッ!?」
松田の盾になったオレは、何故か松田に横に飛ばされバランスを崩してその場に倒れた
「テメェ…楽しい楽しい解体の時間だってのに邪魔してんじゃねェ!!」
えぇぇぇぇ!!
ちょっと何言っちゃってんのォ!?
なんてツッコミを入れる間もなく、爆弾犯は銃のトリガーを絞る
「陣平ちゃんッ!!!!」
咄嗟に身体を動かし倒れ込む様に松田に覆い被さった