第2章 黒に落ちる/小さくなった理由
息も整わないまま声の方に顔を向ける
あざ笑うかのように見下ろされるも、自分からはにらみつけることしかできず、グッと噛みしめた
「兄貴、そろそろ取引の時間ですぜ」
「チッ…ライ、ここの後始末をしておけ、奴の結末も報告しろよ」
「了解」
「生きて会える日を楽しみに待ってるぜ?」
肩でクツクツと笑いながら車に乗り込み、この場から去っていったジンとウォッカ
それを目で追っている最中に、身体に異変を感じ始める
「何か身体に変化はないんですか?」
オレ達に近づいてくるライを警戒しながら零が声を掛ける
「……ちょっと、身体、熱いかも…」
じわりじわりと熱を持ち、次第に体中から汗が滲み出てくる
風邪で高熱を出した時の様に、目の前がくらみ始めた
「バー…ボン…っ」
この感じは…とてもヤバい気がする
もうジンはいないからいいよな…と思って、身体を支えてくれている零の胸に顔をうずめる
ドクンッ――
大きく心臓が跳ね上がると同時に、息がうまく吸えなくなる
骨が溶けてるみたいに
身体が、熱い…
「うぁ…っ…」
「オイっ…しっかりしろっ!!」
支える零の腕に力が入り、オレを強く抱きしめる
ヒューヒューと短く呼吸をするも息苦しさは緩和されず、汗なのか涙なのかわからないものが顔中を伝って零を濡らす
「解毒薬は飲ませたんだろ?バーボン」
「っ!?」
ライが何か言っている
でも、何を言っているかなんて頭には全然入ってこない
息を吸うだけで精一杯
苦し…
死にたくない…
零と生きたい…
零…
れ‥い…っ…
れ……
薄れゆく意識の中
必死に彼の名を呼んだのが
オレの最後だった
もう、星の音は聞こえない……