第2章 黒に落ちる/小さくなった理由
早くしろとジンからの催促に零はキリッと噛みしめる
覚悟をしていたはずなのに、オレの息も震える
当然薬は飲みたくない
でも、零が薬を飲ませなければ
オレが薬を飲まなければ
零が生きられない
落ち着け自分
薬はまだ試作段階
効果はわからないけど解毒薬もある
死ぬと決まったわけではない…
目を閉じて、深く息を吸って、吐いた
今は零を生かす方が大事なことだ
それだけを考えろ
覚悟を決めて目を開けると、そこには同じく覚悟を決めた顔があった
その先には今にも降り注ぎそうな星が数え切れないほどキラキラと音を立てて輝いている
チームで親友だったスコッチが死んだ日もそうだった
だからあの日、オレは星に誓ったんだ
『零は一人じゃない。オレがいる。絶対、零を一人にさせないよ』
なのに……何やってんだオレ……!!
「バーボン、ごめんな……生きてたらまた一緒に仕事しよう」
「……えぇ。あなたがいないと困るので、できれば生き延びてくださいね」
涙で滲み始める零を消さぬ様堪える
下手に話もできず、愛しい名前も呼び合えずに終わるのか
いや、最後に顔を見られただけでも運が良かったと言うべきか…
深呼吸をしてから口を開けると
零の震えた手が近づく
薬が運び込まれ、追って水が流れ込む
「…っ!?」
と同時に零はオレの鼻と口を片手で覆った
反射的に酸素を求めようとするが、その前に薬ともう一つの何かが喉を押し進むように通り、堪えていた涙が一筋溢れた
「んんーっ!」
零の手から逃れようと首を振ると、すぐに手は離れ、酸素が一気に肺に運ばれる
はぁはぁと肩で息をするオレを零が支えてくれているが、汗と涙が頬を伝うのと同時に、零の眉も眉間に寄った
「飲み込んだか。ククッ…さぁ、運試しの時間だ」