第2章 黒に落ちる/小さくなった理由
***side降谷
「ライ、貴様何を言っている!?」
苦しむ叶音を必死で抱き留め、隣まで近づいてきた男、ライに睨みを効かせた
叶音からの反応はなくなったが、まだ息はしている
叶音は生きている
奴さえいなければ、すぐに処置ができるのに
「ジンの目は誤魔化せても俺の目は誤魔化せないぞ」
この男の言う通り、APTX4869と一緒に解毒薬を飲ませたし、ジンにも言及されなかった
気づかれてないのはわかっていたが、コイツのことまで回らなかった
またコイツの目の前で、大切な人を失うのか…
「彼は公安の仲間だろ?ここの始末は俺がしておく。お前は救える命を救えばいい」
「だから何を言っているんだ!?」
「…っぁあぁ…」
「えっ…!?」
突然の叶音の苦しみに目をやると、見たこともない状況を目の当たりにする
「身体が…縮んで!?」
「なんだこれは…!?」
見る見るうちに叶音の身体が縮んでいく
熱を帯びながら、このまま消えてなくなりそうな勢いで、苦しみながら、小さく、小さく…
「嘘だろ!?止まれ!止まってくれっ!!」
両腕一杯の力で抱きしめるが、徐々に小さくなっていくのが腕を伝わり、このまま消えてしまうのではないかという恐怖心が迫り上げてくる
でも何もできない
ただ抱きしめているだけで、救えない…
「おい大丈夫か?」
「僕の叶音に触らないでください!!」
パシッと僕達に伸ばされたライの手を思い切りはじいた
「ほぉ…彼の本当の名は叶音と言うのか」
「な…んで…」
「彼から何も聞いていないのか?」
「……?」
「俺はFBIだ。スコッチの時と今の君の状況からして、君も彼と同じ日本の警察なんだろう」
「F…BI…」
「俺も彼を救いたくてね…それに涙を流す程ならば、手遅れになる前に病院へ連れて行ってやれ。ここは俺が引き受ける」
涙…?
あぁ、僕はいつの間にか泣いていたのか…
「くそっ…!」
涙を拭い叶音を抱き上げ、近くに停めた車へと走り出す
身体は一定の大きさまで小さくなると縮むことを止め、腕の中に居るのは小さな少年で
今この状況を鎮めようとしているのがFBIで
薬を飲ませたのはこの僕で…
僕は何をしているんだ…!!
どうしていつも大切な人を守れないんだ…!!