第5章 赤に揺れる/小さくなったその後
「もちろんタダでとはいわない。APTX4869についての情報とそれを服用した後のオレのデータ提供、この姿で良ければ捜査にも呼んでもらえれば動く」
「FBIでは承諾を得られそうだが、日本はどうかな」
「なんでそう上から目線なんだFBI。日本だって提案くらいは聞いてもらえるさ。ただ、難しい問題はたくさんある」
そうだよね
ちょっと自分に都合良すぎる案を出したと思ってる
でもこのままどちらかのプログラムを受けたとして、零と一緒にいられなくなるのは確かだ
保護を受けずに子どものままでも警察に関わっていられたら、
そして何らかの形でオレの名前が残ってさえいれば、これからも零と一緒にいられる気がする
……気がするだけで確実な方法はないんだけど…
「ごめんな、なんかいつもの様に良い案は浮かばなかった」
「今回ばかりは俺達だけでの解決は難しい。仕方がないさ」
「朝一で上官がここに来る予定になっているから、今後のことはその時にまとめよう」
「なら、俺の上司も同席させてくれ」
上の人らと会うのすごく嫌だけど…こんな目にあったんだ、こればかりは避けられないか…
そういえばこれからも働く気でしかいなかったけど、オレ警察辞めるようなのかな…
「そんな顔をするな。生きていればチャンスは来る」
そう言って諸星さんが席を立ち、零や風見も続いて立った
「FBI…一先ず、叶音を救ってくれて感謝する」
突然零が頭を下げるからここに居る全員が目を丸くして固まった
「どどどどうしたのっ!?」
「明日はスコールだな」
あのバーボンがライに感謝するとか、日本大好きな零がFBIに感謝するとか、驚きすぎて開いた口が塞がらない
本当に明日は嵐かも?
「僕だって感謝のひとつくらいするさ。特に今回のことに関しては、本当に」
ライがFBIでなければ今頃オレや零はどうなってたか、そういうことを言いたいんだろうなと思った
「諸星さんオレからも、本当にありがとうございました」
「俺は何もしてないさ。ただFBIにとって都合の良い方に動いただけだ」
「借りは必ず返す」
零の言葉に鼻で笑う諸星さん
「本当に君は愛されているな。まだ全て解決していないが、せっかくだ、この間に少し眠って身体を休めたら良い」
また明日来る、とオレの頭を撫でると踵を返して帰って行く
見送りにと風見が後を追って出て行った