第5章 赤に揺れる/小さくなったその後
スコッチの一件があって、いつ、どう報告をすればいいか迷っていたら、言えずにいた
組織の中ではスコッチを殺したのはライということになってる
零はあの現場の状況からスコッチは本当は自殺をしたのではないかと気付いていた様だったが、それを隠したライの行動や言動がどうしても飲み込めないでいる
そんな零にライは本当はFBIだったなんて言ったらどうなるかわからないし、お互いにNOCだと知らない方がやりやすい事だってある
だから零だけでなくライにも零が公安だってことは言っていない
でも今回のオレの一件でお互いに知ってしまった
オレが倒れた後、2人は何を話したんだろうか…
「ライはオレが小さくなったこと…」
「目の前で一緒に見た。病院に連れて行けと言ったのもアイツだよ」
素性が確かでない零に自分の事を明かしてまでもオレをすぐに病院に連れていかせたのも、現場の後始末をしたのも、ジンへの報告をしたのも、全部アイツだと零は言う
「…叶音に異変が起きてから、僕は何も出来ていない」
「そんなこと…」
そんなことないのに
むしろ何も出来ていないのはオレなのに
「失礼します、お連れしました」
ノックの後に風見とライが入ってきた
「立場を変えて会うのは初めてだな。FBIの諸星大だ。潜入中の為本名は伏せておく。察してくれるだろ?」
「はじめまして。公安警察の安室透です。僕の方も本名は伏せておきます」
初めて会う訳ではないのに初めての様な空気に、病院とは思えない雰囲気が漂う
「諸星さんはじめまして、公安警察の星影叶音で「えぇぇ!?」……。」
オレの自己紹介に声を上げて驚いたのはもちろん風見で、やっぱり零は何も伝えてなかったんだなと確信した
「すまない風見、叶音の目が覚めたら言おうと思ってたんだが、タイミングを逃してしまった」
「ほ、本当に叶音さんなんですか!?」
「よく見てみ?」
じーっと風見を見つめてみると、驚きを隠せていない顔で見つめ返してくる
あ、首傾げちゃった
「確かに、目元などどこか面影はありますけど…これはいったい…」
「驚くのも無理はない。俺も何のジョークかと思ったさ」
さすがのライ…じゃなかった、諸星さんもこれには驚いたらしい
「驚かせちゃってごめんなさい。まー…正直本人が一番驚いてるんだけど…」