第5章 赤に揺れる/小さくなったその後
「身体が縮むって…」
こんなことが実際にありえるのだろうか
これは本当に現実なのか?
一体、オレの身体に何が起きてるんだ?
もう一生このままなのか?
どうして…こんなことに……
「これもAPTX4869の効力の1つなのかもしれない。幼児化するという情報は…って、大丈夫か?」
ベッドに下ろしてもらうも、この現実に対する動揺とショックの大きさにクラクラする
「…頭痛い…熱い…気持ちわる…」
先程とは違った身体の火照りに冷や汗が滲んでくる
三角座りのまま身体を丸めていると零が背中を擦りながらコップを差し出してくれたが、手を出すも口にする気になれなくて
「少し水分取って」
「ん…」
手ごとコップを口に運んでもらって水を飲んだ
「熱もあるからな。身体が縮んだことは言っていないが、担当医の話だと発熱以外は特におかしな点はないそうだ」
病院に運ばれてからは点滴で熱を抑えるのと同時に簡易的な検査をしてくれたらしい
身体から毒薬の反応は全く出ず、成分も全くわからないとのこと
あとは本人が目覚めて、小児科医が診断してからの検査ということで、それから2時間程経って目を覚ましたそうだ
「目覚めたらナースコールって言われてるんだが、呼んでもいいか?」
熱があるから身体がフワフワしているのか
身体の違和感は熱のせい…にしたい
「零…これからオレ、どうしたら良い?」
「まずは叶音自身の身体と気持ちを落ち着かせてから話そう」
そう言ってナースコールをすると、すぐに担当医と看護師が部屋に来てくれた
風見が上手いこと手続きをしてくれたお陰で名前等の個人情報は伏せてあり、オレは身体の具合を話す程度で済んだ
点滴も取り替えられ、小児科医が出勤したら1番に診てくれるので、それまでは安静にとのことで部屋を去って行った
消化に良い物なら少し食べて良いって言われたけど、食べる気にもなれないや
「熱って結構辛いのな。小学生ぶりな気がする」
この姿で小学生ぶりって言うのもおかしいけど…と小さく笑ってみせると零が手を握ってくれて、重なるその手の冷たさが心地良い
「冷たくて…気持ちぃ…」
零の手を引いて頬まで持って来る
頬に当てた大きな手と、それを掴んでるオレの小さな手
目を閉じて感じる、これが…現実……
「叶音…」