第5章 赤に揺れる/小さくなったその後
組織に殺されたって聞いてるから殆ど会える確率はないと思うけど、零が行方を追ってくれているから、可能性はゼロではないと思ってる
零は赤井に借りを返せてないままなのが嫌だから絶対に捜してやるって言ってるけど、本当はオレの為に捜してくれている部分もあるんだと思う
オレを助けてくれた赤井をオレは助けてやれなかったとか、組織にNOCとバレたのも本当はオレの最期の報告を偽ったと知られてしまったからではないのかとか、色々と悔やんでいたのを、言葉にしなくても零は察してしまっている
「せっかくですから、少し眠って身体を休めて良いですよ」
突然無言になったからか、眠たそうに思われちゃったかな
まぁ実際にタオルの温かさと沖矢さんが眉間のちょうど良い部分を押してくれてるお陰で、寝不足の身体はだいぶ機能しなくなっている
にしてもさっきの言葉、こんな偶然があっていいのか
赤井に最後言われた言葉も似たような感じだった気がする
あれはオレが毒薬を飲まされて、零が運んでくれた病院の病室で…
***薬服用後の病院で
ほんのり照らされている灯りに目を覚ます
少しずつ戻ってくる記憶を辿るも、ジンに捕まってAPTX4869を飲んだ所までしか思い出せない
あれからオレはどうなった?
生き延びたのか、死んだのか…
ここは現実なのか、夢の中なのか、死後の世界とやらなのか…
身体が宙に浮く様な感覚のまま視線だけで辺りを見回すと、すぐ隣りに椅子に座って膝に肘をつき、頭を抱えたまま俯く彼の姿が目に入る
零がいる…
手を伸ばすも上手く動かせず、近くにいるはずの零までの距離を感じる
「れ…」
手が届く前に渇いた喉の奥から出した声に、零は突然立ち上がる
ガタンと大きな音を立てて倒れた椅子の音が部屋中に響き、視線が合うのと同時に、ベッドに横になるオレを抱きしめるように零が飛び込んできた
伸ばした手はようやく零の背中に辿り着くことができ、震える背中を撫でる
「叶音っ…」
「ん…」
「…生きてる……」
「う、んっ…」
生きてると言うその言葉でようやく現実味が戻ると、自然と涙がこぼれ落ちた
ギュッと抱きしめる強さが零の気持ちを表していて、痛いくらいに伝わってくる
「れぃ…」
「叶音…」
顔を合わせ、涙と共に降ってきた唇に熱を感じ、うるさいくらいの心音に生を実感する