第5章 赤に揺れる/小さくなったその後
「お、きやさっ…離して…」
「離したら付き合ってくれませんよね?」
「…付き合うから!何するかちゃんと教えてください!!」
「言ってませんでしたか?」
えぇ、言われませんでした
あれよあれよという間にこんな状況になりましたけど
すぐに手とタオルを外してくれて、沖矢さんはまたオレの隣に座った
「実は隈を改善するマッサージを教えてもらったので、本当に改善されるのか実験してみたかったんです♪」
丁度すごい隈で訪ねてきたオレを見て、これはいいチャンスだと思ったらしい…
「それなら先にそう言ってください!」
「言ったら協力してくれました?」
「まー…隈ができてるのも困ってたし、改善してもらえるなら…」
「では♪」
待った無しに早速促されてソファに横になり、頭を沖矢さんの膝に乗せる
零の膝じゃないのが凄く嫌だけど、ここで拒否したら今度は手を縛られそうな勢いなので渋々従う
「力を抜いて、リラックスしててくださいね」
そう言って両目をタオルで覆い、上から目の周りを程良い加減で指圧し始めた
なんだかむず痒いけど、何をするのか目的がわかっていればそんなにドキドキすることはなかった
「意地悪してすいませんでした」
「え、意地悪だったんですか?」
「君を見ていると、前に弟の様に可愛がっていた知り合いに似ていて、少しからかいたくなるんですよ」
その人は大人でしたけどね、と、タオル越しで沖矢さんの表情は見えなかったが、声色でなんとなくその人はもういくなってしまったんではないかと思った
「…そういえば沖矢さんって煙草吸うんですか?」
「えぇ…滅多に吸わないのですが…」
臭い残ってましたか…と謝ってくれたが、オレは別にそうゆう意味で言ったわけじゃなくて
「オレが兄ちゃんって慕ってた人も同じ煙草吸ってたから、なんか懐かしいなって思って」
「慕ってた…?」
「その人、オレを助けてくれた後に、いなくなっちゃったんです」
沖矢さんから微かにした煙草のにおいが同じで脳内に現れた彼
潜入捜査してた時に、不器用だけどオレの面倒を見てくれていたライこと…赤井秀一
そういえば、ライにもよくからかわれていたような気がする
「…会いたいですか?」
「うん。亡くなってるかもって聞いたんだけど…生きているなら、会ってちゃんとお礼がしたいんだ」
「会えるといいですね…」