第12章 米花商店街の魔女
「ただ過ぎっただけなんだ。3年前のあの出来事は公にしてはいけない機密事項、調べようものならば上から何を言われるかわからないさ」
それはオレだって重々わかっている
もしかしたらそうかも、なんて理由じゃ捜査の許可はおりないだろうし、調べてるなんて知られたら何かしらの処分を受けるだろう
「だからそっちの線で動こうだなんて考えないで、まずは自分の気持ちを落ち着かせることを考えるんだ。今日はあの日のことを思い出しすぎてしまっているんじゃないか?」
自分から思い出させるようなことを言ってしまってすまないが、と言いながらオレの頬を両手で包み込む零
心配そうな顔をしてオレの顔色を確認し、親指で優しく撫でてくれた
確かに今日はあの日のことを思い出しすぎている
どんなにもう大丈夫って思っていても不安な気持ちは心のどこかに潜んでいて、最終的に辿り着くのは、あの日と同じように今一番大切な人がオレの目の前から消えてしまったらという不安と、それを超えた恐怖…
「零は、いなくならないよね…」
頬を包む零の両手に、オレの小さな手を重ねた
「僕はずっと叶音とずっと一緒にいるよ。ひとりにしないって、約束しただろ?」
「うん…約束、した…」
どんなことがあっても一緒に乗り越えようって、あの壊れた観覧車の中心で約束したんだ
だから、大丈夫、あの日のことを思い出しても、何があっても、もう、大丈夫…
でも、何度自分に言い聞かせてもなかなかスッキリしない
その理由を知ったのは少し後のことで、この時既に、オレの背後には死神が忍び寄っていた
『例の爆弾犯が脱獄した。公になる前に対処せよ』
━第12章END━