第12章 米花商店街の魔女
「…あのさ、」
ぽつりと声を出せば「ん?」とオレの顔を覗き込むように横から優しい視線を送ってくる
それにチラりと目を合わせ、自分一人では煮詰まってしまった疑問を吐き出した
子ども達が見た魔女はどうしてあの爆弾犯が使った"円卓の騎士""メジャーリーガー"という言葉を使ったのか
そもそも何故商店街へ現れたのか
「叶音は魔女の容姿を聞いて何か心当たりはなかったかい?」
魔女の容姿…
確か、お面の鼻がクチバシみたいにとがっていて、魔女の鼻みたいだって言われて、きっとそのお面はどこか不気味なペストマスクのことだろうなとは思ったんだ
そしてそのマスクになぜか心当たりがあって、でもハッキリと思い出せなくて…
「3年前の11月、僕たちも同じ様なマスクをした怪しい爆弾犯と遭遇したろ?」
「3年前の11月…」
言葉に出しながら記憶を辿る
すると突然ピンとくる映像が頭の中を駆け巡り、同時にゾワッと鳥肌が立った
3年前の11月は松田が……
いや、零が言っているのはその前日
3年経った今でもまだ未解決な事件があっただろ
鳥肌をおさえる様に自分の両腕を強く握った
「叶音がまた松田の事も思い出してしまうかもって思ってね、言うかどうか迷ったんだ」
零もそう言いながらオレの背中を撫でてくれた
「ごめん。忘れちゃいけない出来事だったのに、あの日の事と一緒に消し去ろうとしてた」
3年前の松田が亡くなる前の日は同期5人で萩のお墓参りに行ったんだ
その帰り道に渋谷の裏通りにある雑居ビルでペストマスクをした怪しい爆弾犯に遭遇、同期5人で対処するも犯人を逃がしてしまった
仕掛けられた爆弾は松田が解除し、表向きにはガス漏れ騒ぎとして処理されている
爆弾は解析をする為にすぐに専門の施設へと運ばれたが、謎の爆発があり何もわからないまま跡形なく消えてしまった
その後は上からの圧がかかり極秘扱いの事件となってしまい、誰も触れられないよう封印されている
「まさかあの時の犯人が!?」
「いや、確証はないさ。ペストマスク・爆弾犯・松田…色々考えていたらあの日に辿り着いただけなんだ」
仮にそうだとしても、なぜ今、なぜあんなやり方で、なぜ商店街に……