第13章 ハロウィンの花嫁
第13章━ハロウィンの花嫁━
3年前の11月6日━━━
「え!?じゃあ寮に帰らずずっと捜一に寝泊まりしてるの!?」
毎年恒例同期5人での萩の墓参りの帰り道、零の運転するRX7の後部座席で、助手席に座る松田の話に驚いた
スポーツカーの後部座席は決して広いものではなく、成人男性の中でも小柄な方のオレでさえ窮屈に感じ、前の席に身を乗り出しながら座っている
「しゃーねぇだろ、爆弾魔がいつ動くかわかんねーんだからよ」
腕を組みながら気だるそうに話す松田は、親友で幼馴染である萩原を殉職させた連続爆破事件の犯人を自らの手で逮捕し仇を打つ為に、爆弾処理班から捜査一課に転属したばかりだ
爆弾魔が事件を起こし仲間が逮捕されたのが11月7日であることから、この近辺で何かしらのアクションがあるのではないかとヤマを張っているようだ
連続爆破事件を調べながら爆弾魔の動きにいち早く対応できるようにと捜一のオフィスに寝泊まりをしているらしいが…
「身体は平気?あんまり休めてないんじゃない?」
「俺の体力なめんなよ!これくらいでバテてたらあいつとの約束なんか果たせねぇっての」
睡眠はしっかりとっている様だけど、通常の勤務をしつつ爆弾事件を追い、庁内で寝てるだなんて絶対に心身共に休めてはないだろうなと思った
でも、仇を取るという萩との約束の方が大事なんだろうな…
「それよりも姫、昨日頼んだ分析、早めに頼むぜ」
「ん、今進めてるところだから今日中には返事するね!」
姫と呼ばれているオレは現在特別捜査官になる為に鑑識官としてあらゆる事件の分析などを担当している
松田から依頼された連続爆破事件に関する分析もちょうどオレの所に回ってきて、オレも萩の仇を取る為に最優先で進めているところだ
「2人とも、送ってやれるのは渋谷駅の手前までだがいいな」
運転をする零は公安に所属していて、人目についてはいけない立場となっている
詳しくは話してもらえてないけれど、きっとただの公安ではなくゼロに所属したんじゃないかって思っている
こういうのはいくら親しい仲でも話しちゃいけない事になってるからオレも詳しくは聞かないけど、零程の実力者ならありえないこともないだろうなって
「うん大丈夫、忙しいのにごめんね」
「ごめんじゃなくて?」
「あ、ありがとう!」