第12章 米花商店街の魔女
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それからすぐに迎えに来てくれた風見の運転で研究室へ戻った
道中風見からの報告によると、例の爆弾魔は刑事施設にいる事が確認できているとのこと
他に仲間がいるという報告はなく、いたとしても連絡も取れない状況下にいるので関連性は薄いだろうと言っていた
零の要請ですぐに動いてくれた風見の言葉に一先ず安心しつつ、オレは研究室のパソコンから米花商店街の防犯カメラへとアクセスをし、子ども達が魔女らしき人物からお菓子をもらった時間帯をチェックした
子ども達が商店街へやって来た姿が映っている……が、その前後で魔女らしき人物は一度も映ってはいなかった
防犯カメラの位置を把握していて上手くすり抜けたのかもしれないし、そうでなければ商店街の中にいる人物による行動の可能性も考えられる
事件性がないから警官は動かせないけど、商店街のパトロール強化は要請していて間違いないだろう
あとは零が子ども達から預かったお菓子から何か手掛かりが掴めれば良いけど…ここまで姿をくらませているのだから、痕跡を残す様な事はしていないと思う
「お疲れ様、何かわかったかい?」
ドアノックに続いて研究室に入ってきた零
手には廊下の自販機で買ったであろうペットボトルのカフェオレと、ポアロでよく見る紙製の四角いパックを持っていた
ポアロにいるはずの零の登場にハッとして窓の外を見れば、既に陽が落ちかかっている
「あの子達がもらったお菓子の分析はもう少し時間がかかりそうだよ」
そう言いながら渡された紙製のパックを開けてみると、ジャック・オ・ランタンの顔が書かれたクッキーが並んでいた
生地にかぼちゃが入っているんだなと分かるくらいオレンジ色をしている
子ども達に作ると言っていたお菓子
こんなハロウィンらしいクッキーの焼き上がりを見た子ども達の満面の笑みが簡単に想像できて、ホッと一息口元が上がった
でも心配事が消えた訳ではない
「落ち着かないって顔だな」
「……うん」
少し休憩をしよう、と零はソファに座りオレに隣りに座るようトントンと手で示した
それに誘われる様に零の隣りに座ってかぼちゃのクッキーをひとつ口に運ぶ
「おいしい…」
ポツリとつぶやくと、頭に零の優しい手が添えられた
ゆっくりと撫でてくれるそれは、オレから話し出してくれるのを待ってくれている零の優しさだ