第12章 米花商店街の魔女
「もう、大丈夫…」
くっつけていた顔を少し離してニッと笑って見せる
でも上手く笑えたかというとそれは微妙な感じで、目を合わせていた零の口からは小さく溜め息が零れた
「そういえば安室さん、アイツらがもらったお菓子って?」
「ああ、何の問題もないただのお菓子だったよ。でも商店街で配っている物ではないし、知らない人から食べ物を貰うのは良くないと思って僕が預かることにしたんだ」
零にお菓子のことを頼んだのはオレだったのに、コナンに言われて思い出した
でも良かった…事件性のある物だったらどうしようと思っていたけど、今のところはなんともなさそうだ
それに零が預かるってことは、もしかしたらそこから指紋や入手経路を割り出してわかるとこもあるかもって思っているに違いない
例の爆弾魔に関係がなかったとしても商店街の許可なしにお菓子を配っているだなんて、いくらハロウィンの期間だと言っても怪しすぎる
警察からの厳重注意くらいはしておかないと…
「リュウ、迎えを呼んであるから一旦戻って欲しい」
迎えというのは風見のことで、"帰る" ではなく "戻る" と言ったのは、登庁して動いて欲しいからだと理解した
零は今回の件についてもう動き出している
何も情報が掴めていないなら調べなくっちゃ…
これから何か起こるなら、先回りして止めてやる…
また大事なモノを失ってしまう前に…
未だ微かにザワつく気持ちを落ち着かせる様に自分を鼓舞した
零の腕から抜けて着地すれば、距離を戻したコナンが心配の目を向けている
「わりぃ…」
罰の悪そうな顔で言われたけれど、コナンが謝ることではない
自分で勝手に思い出して、自分で勝手に気分を悪くしたんだ
きっと昔のことを思い出して少し熱くなりすぎた罰、所謂自滅…
コナンにそう言いながらガシガシと頭を撫でてやった
「さ、僕たちはポアロに戻ろう」
零がコナンに目配せしながら言うには、何やらこの後子ども達にお菓子を作る約束をしているらしい
いつもならポアロのバイトを早退して事件や組織の仕事へと飛び出して行くのに、オレに戻るように言ったのはそういう理由だったのか
「まだ何があるかわからないから、アイツらのこと頼んだよ」
コナンの肩に手を置きながら言うと心強い返事が返ってきた