第11章 紅の出張
犯人は部下2人によって地元の警察官へと引き渡され、オレと零はこの場を仕切ることになった警察官に細かな話をしてようやく観光に戻れる状態となった
「そういえば風見は?」
人質になったオレの背後に回ったのは風見かなぁと思ってたけど、実際に来たのは部下2人だった
となると別の所で対応に当たっているのかな…
「風見には犯人が逃走した時の為に坂の降り口に向かってもらったんだ」
万が一犯人がオレを連れたまま逃げた時、風見とオレなら上手く意思疎通して足止めできるだろうと思ったらしい零の考えに、風見に対する信頼の大きさが見えた
「それに警備室から出てきた警備員が規制を張ってくれてはいたけど、指揮も取れる風見に行ってもらった方が全体の対応もできると思ってね。落ち着いてきたし、そろそろ戻ってくると…あ、ほら、あそこ」
零の指差す方を見ると、汗だくで坂を駆け上がってくる風見がいた
登りきった所で辺りをキョロキョロと見渡している風見に向かって大きく手を振ると、気付いて早足でこちらに向かってきてくれた
「風見お疲れ様!」
「ご苦労だったな」
ゼェゼェと息を切らして来た風見は呼吸を整えながらハンカチで額の汗を拭っている
「すいませっ…坂を何度も、往復したものでっ…」
この坂を何度も走って往復することなんてなかなかないよなと冗談も思いつつ、オレ達の見えない所で動いてくれていたことにありがとうと言うと、しゃがんだ風見にガシッと肩を掴まれる
「ん?」
「ん?じゃありませんよ!人質になるだなんて、なんて危ない事してるんですかっ!!」
風見に荒っぽく言われるだなんて思ってもいなくて、目をパチクリさせてしまった
「無事だったから良いって訳じゃないんですよ!?もし万が一の事があったら…」
「ごめんっ!女の子が人質にされそうだったから犯人の気を引くことしか考えられなくて、気付いたらああなってたんだ。でも、オレが人質になった方が警察側としても動きやすかったでしょ…?」
「それはそうかもしれませんけど…心臓に悪いです…」
眉を下げる様子に申し訳なさを感じていると、零も隣りにしゃがんで苦笑いを浮かべる
「心配したのは僕も同じさ。でもリュウは他の警察官が動けない中、瞬時に現状を把握してあの時の最善を選んで動いてくれたんだ。心配ばかりではなく、感謝もしてやってくれ…」