第11章 紅の出張
「ごめん…」
「刃物が偽物だったからって危険なことには変わらないんだ。だいたい迷子のフリをするだけの筈が何があって人質なんかに…」
「リュウ君…だったよな?」
抱きしめられながら耳元で静かに説教が始まると、それを遮るように世良さんが駆け寄ってきた
「君は凄いね…あんな冷静に判断して動けるだなんて、子どもじゃないみたいだったよ」
「世良お姉さん!」
そして茶髪の零に何かを感じたのか、顎に手を当てじっくりと観察される
「…あんた、ポアロの安室さんそっくりだな」
「……?」
「あ、この人は透兄ちゃんの親戚なんだっ!だから似てるのかも!オレもそう思ってたし!!」
アハハと苦笑いをすれば腰に手を置きながら疑いの目を向けてくる世良さん
零は様子を見ているのか首を傾げてニコッと笑うだけだった
やっぱり関わらない方が良さそうな子だ…
世良さんはふーん…と納得してない顔を今度はオレに向ける
「犯人に言ってたこと聞いちゃったけど、どうして今日は警察官がたくさんいるって知ってたんだい?」
「えっと、それは…」
「世良!」
言葉に詰まっていると、警官に事情を聞かれていた新一が焦りながら走って来てくれた
「蘭達が呼んでるんだ、早く行くぞ!」
「でもボクまだ…」
「俺は警察と話をしてから行くからって先に行って伝えといてくれ、頼んだぜ!」
新一は世良の背中を押して強引にオレ達から引き離してくれてた
わかったよと残念そうに蘭さん達の元へ走り去っていく世良さんを見送ると、
「リュウの親戚の方ですか?リュウが犯人の気を引いてくれたおかげで女の子を助けることができたんです。引き渡した女の子の両親も感謝していました。ありがとうございます。じゃあリュウ、あんま無茶して安室さんに心配かけんなよ!またな!」
と、言いたいことだけ言って嵐のように去って行った
あの言い方だと、やっぱりこの茶髪の親戚が零だってことに気付いてるな…
「なぁにが無茶だよ。無茶して修学旅行に参加してる奴に言われたくないなぁ」
「あんなお礼を言われては、リュウのことを叱る訳にはいかないか…。でも彼の言う通り、あんまり安室さんに心配かけないでくれよな」
「はーい」
他人の様にさん付けした零に絶対無茶をしない約束はできないので、とりあえず返事だけしとおいた