第11章 紅の出張
オレの言葉を聞いて新一や私服警官が動こうとしたが、黒いオーラを纏った大ボスがポケットに両手を入れたままツカツカと私服警官達と犯人の間に姿を出した為一旦動きを止める
大ボスこと零の顔が凄まじくて、周りはギョッとしていた
この犯人もあの世行きになるんじゃないか…?
「なんだでめぇ!近付くとガキを刺すぞ!俺は本気だからな!」
本気のクセに声は震えてるし、模造品の刃物だし、この犯人大丈夫か?
茶髪の零に気付いた新一はドン引きした様な顔で一歩後ろに下がっていて、関わらない方が身のためだと思ったんだろう
まだ工藤新一として零と会ったことはないし、バーボンという裏の顔もあるからね
「Daddy!help!!」
「ヘルプだぁ!?お前は俺が逃げ切るまで一緒に行くんだよ。って、通じねぇか…」
オレはバッチリ通じてるけど、こいつはオッケーとヘルプしか通じないのか
じわりじわりと参道の方へ後退りしながらこの場を離れようとする犯人は、走り去るタイミングをはかっているに違いない
オレは零達が仕掛けるタイミングを見逃さない様にして上手く逃げなきゃ…
犯人が一歩後ろに下がれば零が一歩詰める
また一歩下がれば一歩詰められる
これは犯人の注意を零に向けさせる為の行動に違いなく、となると犯人の背後に誰かが回り込んでいるはず…!
「く、来るなっ!コレが分からねぇのか!?本気で刺すぞ!」
「誰を何で…」
「刺すだって…?」
声のした両側を見れば、犯人の肩に左右一人ずつ手を置く風見の部下2人
やはり後ろに回り込んでいた様だ
普段のあの表情はどこへ行ったのか、犯人にめちゃめちゃガンを飛ばしている
「ひぃッ…!」
刃物を持っている方の手を強く掴まれ、離した刃物はカランカランと音を立て地面へ落ちていった
それを合図とする様に零はオレに一言言い放つ
「Bite a arm...」
どごぞのマフィアのボスが“殺れ”と言った様なトーンに、言われた通りすぐにオレを拘束する男の腕に思いっきり噛み付いてやった
「いってぇぇぇ!!」
解放されようやく地面に着いた足を動かし犯人から離れると、部下2人が犯人の腕を後ろで拘束して暴れないように立ったまま押さえ付ける
そこに零が近付いて行き、犯人を見下ろした
「ぁ…あの……ごめぅぐふっ!!」
観念したであろう犯人の鳩尾に、零の拳がきれいに入った