第11章 紅の出張
乗り込んだ車の前後は関係者に厳重に挟まれていて、窓際は危ないからきちんと座ってと言われながらも窓に張り付いて京都の街並みを楽しみながら移動をする
さすが観光地とだけあってバスやタクシーも多く、軽い渋滞に巻き込まれながら最初の目的地である清水寺へ向かった
車を降りてからはまた私服警官に囲まれながらガイド役の警官を含めた3人で参道の坂を歩く
ここへは学生の頃に来た以来で、こんなだったかなぁなんて思いながら、きっと違う風景に見えるのはあの頃よりも身長が低いからだと思った
本来なら高くなっているか変わらないかなのに、腰が曲がるおじいさんになる前に低い目線で歩くことになるなんて、誰が想像していただろうか…
本来なら零と同じ目線で肩を並べて歩いていたかもしれないのに、なんて思いながら零を見上げると、どうした?と聞きたげにしゃがんで目線を合わせてくれる
「Yatu...ha...shi?」
ちょっと誤魔化す様に零の後ろにあったお店のローマ字を読んでみると、気付いた零が店員と話して試食を貰ってくれた
やっとここに来て京都の物が食べられて満足!
生八ツ橋おいしすぎる…!
それから和風なお店に立ち寄ったりしながら、ようやく丹塗りが青空に映える仁王門へとやってきた
門の前では観光客や修学旅行生が集合写真を撮っていて、ガイド役がそれについて説明をしてくれた
でもオレはその説明よりも見たことのある制服姿の集団が気になっていて、その中から今日ここにいるであろう知り合いを捜した
コナン…じゃなくて、工藤新一はいったいどこに…
「叶音、風見からそろそろだってさ」
キョロキョロと工藤新一を捜していると、零が耳元に話し掛けてきた
そろそろというのは、オレが人混みに紛れて迷子になってしまうというトラブルを発生させて欲しいという合図だ
さて…一流の警察官達をどうやって撒いてやるか…
配置されている私服警官の位置をグルりと見渡せば、ほら、隠れられそうな場所があるじゃないか
「Please tell me the origin of this gate.」
ガイド役に零がこの門の由来を尋ねて惹き付けている間に、観光客の足並みに合わせて人混みに紛れた
そして高く大きな壁になっている、集合写真を撮っている最中の帝丹高校生達の背後に回った