第11章 紅の出張
「風見ごめんね…」
膝に乗ったままシュン…と謝ると、また風見の顔は赤くなる
「だっ、だから!人の膝の上ですることではないと…!!」
「……?」
オレを避けるように横を向いた風見に首を傾げると、隣から零に「おいで」と抱き上げられ、今度は零の膝の上に背中を預ける形で座ることになった
オレは背後から零にホールドされ動けなくなったが、風見は膝の上が空いたことで動けるようになり、警戒して少し距離を取って座り直していた
「風見はとろけた顔のまま近くで見上げないでって言っているんだよ。そんな顔も僕以外に見せちゃダメだから」
「いやっ!自分は、そんな…!!」
「とろけっ…!?っていうか!もう今日はなんなの!?いつもの零じゃない!!」
「そういえば降谷さん…今日で何徹目ですか?」
何徹目?
昨日も一昨日も夕方にオレを家に送迎して、それからまた本庁に戻るって言って遅くまで仕事をしていたのは知っている
でも朝起きたら零は家に帰って来てたから、てっきりオレが寝た後に帰ってきていつも通りオレより先に起きたんだとばかり思っていたんだけど…
「……3徹目」
「えっ!?家に帰って来てから寝てないの!?」
「リュウさん知らなかったんですか!?」
風見の話によると、零はオレの送迎の為だけに一時帰宅をしていた様だ
オレが起きる前に帰宅しシャワーだけ済ませて、起きたオレと朝ご飯を食べてまた本庁に…
全然気付かなかった…
「帰って来てたならオレのことなんか気にしないで少しでも睡眠取れば良かったのに…!」
「いや、シャワーを浴びて叶音の顔を見たら目が冴えてしまってね…」
あ、また意味わかんないこと言い始めた
「少し仮眠して」
「じゃあ少しだけ…」
そう言った零は背後からオレの右肩に顔を埋めるからくすぐったい
抱き枕の様にギューッとされ、このまま寝られたらオレ動けないんだよなと苦笑いで風見を見ると、肩の上で零の顔がスリスリと動き出した
「ひゃあっ…!?」
ちゅっと耳の後ろ当たりでリップ音を立てられゾワゾワと身体が鳴る
変な声が出て慌てて口を抑えるも時すでに遅し…風見の眼鏡からヒビが入る音も聞こえた気がした
「降谷さんいい加減にしましょう!?貴方の為に取ってきた案件、白紙に戻しますよ!?」
「………」
そして零は風見の言葉にピタリと動きを止めた