第11章 紅の出張
「だいたい仕事だってのに何を勿体ぶってるのさ!普通に教えてくぇっ!?」
片手で頬を挟む様に掴まれ、強引に零の方を向かされた
あ…零の目が笑ってない
これはマズったかもしれない…ガチで怒ってる…?
「降谷さん落ち着いてください!?」
「はなひれぇっ!」
掴まれてる手を退けようと両手で引っ張るがビクともしないのはわかりきったことで、どちらかと言うと引っ張ることで零の方へと顔が寄せられている
風見の片膝を跨いでいる為に上手くバランスが取れず、引かれるがままに零の方へと身体が傾いた時だった
「んむっ…!!」
零の片手に固定されたオレの顔が零の顔と触れ合った
いや、顔がと言うか、完全に唇が触れ合っている
こんな時に、しかも風見の目の前で…!!
「ちょっ…えぇー!?!?」
目の前で繰り広げられる光景に風見が驚くのは無理ないが、オレだってめちゃめちゃ驚いている
それにこんな間近で風見に見られながらする零とのキスだなんて恥ずかしくて堪らない
早く離れようと全力で零の肩を押して拒否しても、両頬を掴んでいる逆の手で頭もしっかりとおさえられていて身動きが全く取れる訳もなく…
「ふ…っらめ…っん…」
角度を変えられる度にやめてと言おうとしても開いた隙間はすぐに塞がれてしまう
身体のバランスを取ろうと片手を着いた先はたぶんオレが跨る風見の膝の反対側の膝で、ホントごめんと思いながらもどうしようもなくて、ついつい力が入ってしまう
「んっ…かじゃっ…」
と風見を呼んだ瞬間、零の動きが止まり唇が離れた
「そんな顔をしたまま他の男を呼ぶな」
「…っはあ!?何それ…!」
こっちは顔が赤くなる程恥ずかしさで一杯だってのに、突然そんなこと言われたって意味がわからない
「僕だけを呼んでいればいい…」
「なっ、何言ってんの!?元はと言えば零が…」
「叶音が風見に絡みに行くからだろ」
「だからそれは零がっ!」
「いい加減にしてくださいっ!!!」
お互い一歩も譲らずにいると、風見が声を荒らげてピシャッと言い合いを止めた
「イチャイチャするなら他所でやりなさい!人の膝の上でするもんじゃないでしょう!?」
あー…今度は風見を怒らせてしまった…