第11章 紅の出張
「零の為に取ってきた案件って…?」
「降谷さんもういいですよね?リュウさんに開示しますからね」
ピクリとも動かない零からの返事はなかったが、風見は「はぁー…」と長い溜息をついてオレがまだ見ていない資料を整え手渡してくれた
手元に来た資料には先程の資料に書かれていた要人の名前ともう1人、家族であろう人の名前があった
その下には来日する日の翌日のスケジュールが書かれていて、よく読むと京都での日程が組まれている
「急なことでまだマスコミには流れていないのですが、ご要人が10歳になるご子息を連れて来日される予定になったんです。来日の際にはご子息と日本の文化に触れたいという希望で、対談等を済ませた翌日に京都へ向かうことになりました。現在我々と京都府警とで連携を取りながら計画を進めているところです」
仕事での来日に観光もプラスしたのか…これはだいぶ大掛かりな警護になりそうだな…
「それで…先方の希望で観光中は雰囲気を壊さないよう護衛を外し、各観光名所の貸切もなしにしてもらいたいと言われてしまいまして…」
「えぇ!?それで何かあったら責任こっちだよ!?」
と思ったのはオレだけでなく会議に出ていた全員が思ったそうで…結果、通訳を含めた観光ガイドとして警官が1人が側に付き、観光客の中にも私服警官を、そして各所防犯カメラでの周囲警戒をということになったらしい
「次のページをご覧下さい。来日当日に向けての現地視察、模擬警備訓練の予定です」
やっぱり模擬訓練もやるんだ
実際の場所と工程で経験しているのとそうでないのとでは自分の行動に大きく差が出てしまう
実際にやることで警備の抜けや死角が見えたりと、当日抜かりのない様にする為、事前の経験はかなり大事だ……って!
「ちょっと待って…要人役が公安より大人1名子ども1名ってどういうこと?」
各班の配置とメンバーを見ていると名前はまだ記入されていなかったが、公安から要人役を出すことになっているではないか
しかも子どもって…
「リアリティーを出すために子ども役がいてくれればと案が出たので、ご要人役に降谷さんを、ご子息役にリュウさんをと推薦させて頂きました。もちろん会議では役者はこちらで揃えるとだけしか言っていませんので名は伏せてあります」