第11章 紅の出張
「この案件の裏には何かある…違う?」
「えっとですね…」
下がる眼鏡を慌てて直し、明らかに落ち着かない様子を見せる風見
言葉に詰まって零を見たってことは、きっと零がオレをからかう為に風見を巻き込んでいるに違いない
「れーいー!何隠してるのさ!?」
「フフ…なんだと思う?」
ム…完全に子ども扱いじゃんか
それに否定しないってことはやっぱり別の何かがあるってことだよね
要人の警護で零が喜ぶことってなんなんだ…
「零とオレが一緒に現場に出れるとか…?」
絞り出したけどこんなことくらいしか思いつかなかった
でもそれはオレが喜ぶことであって、もしかしたら零はオレと一緒に現場に出るのは危ないからって好まないかもしれない
「うーん、そんな感じだけど、もう少し掘り下げて欲しいかな」
「えー…じゃあオレと零と風見が一緒に現場に出る?」
「リュウさん、それでは自分が加わっただけで何も変わっていません」
そんなこと言われたって全然わかんない!!
2人だけ知っててなかなか教えてくれないなんて酷い!
しかも仕事なのに!!
「降谷さん、そろそろ言ってもいいんじゃないですか?」
頬を膨らましたオレを見て風見が零に言うも、零は「どうしようかな」とか言ってまだ教えてくれそうにない
何を勿体ぶっているのか知らないけれど、そろそろオレだって我慢できない…!
手に持っていた資料をパサッとテーブルに置き、向かい側に座る風見に近寄った
「え?リュウさん?」
風見の片膝に跨って臙脂色のネクタイを引っ張った
「零のことは気にしなくていいからさ…教えて…?」
座高差で下から見上げる様に「ね?」と首を傾げた
この前たまたま読んだ「これでスーツの彼もイチコロ!」って記事に書いてあったんだ、その記事が本当かどうか立証してやるっ!
「ちょっ!リュウさんここでそれはダメです!降谷さん助け…ヒィィッ!!」
「………」
目の前にある風見の顔が赤くなったと思ったら今度は青くなった
零に助けを求めた風見の視線を追って同じく隣りを見てみると、殺気立った金髪スーツがマジな顔をしている
「僕の目の前でそんな事をして、覚悟はできているんだろうな」
「零が教えてくれないから風見に聞いてるだけだもんね」
唇を尖らせてそっぽを向くと、隣りからブチッと何かが切れる音が聞こえた気がした