第10章 ストラップの行方
「そういえば今の男、見覚えがあるな…」
零が顎に手をやり記憶を辿った
「千槍駅の落し物総合取扱所に行った時に近くに立っていて、ファミレスでは歩美ちゃんの後ろに座っていたような…」
そうなの!?
千槍駅では元太の探偵バッジの件で周りなんて気付かなかったし、ファミレスでは歩美ちゃんの後ろの席なんて気にも留めなかった
「もしかしたら横取りしようとずっと僕達を付け狙っていたかもしれませんね…」
「マジかよ!?」
「サイテー!」
光彦の推理に元太と歩美ちゃんは驚きを隠せない
でももっと隠せていないのはオレとコナンで…
「だから何でだよ!?ただの比護選手のぬいぐるみストラップだろ?」
コナンが子ども達にそういうと、血相を変えた3人が必死な声を上げる
「ただのじゃないもん!!」
「灰原がすっげぇ大事にしてた…」
「世界にたったひとつのストラップだからですよ!」
あー…確かにそう、ただのストラップではない…
でも違うんだ!そうじゃない!
何故ただのストラップではない哀ちゃんの大事なストラップをあの男が取らなきゃならないんだって話なの!!
「もしかしたら、ぬいぐるみの中に入っていた物のせいかも…」
「ギュッと握ったら硬かったから、何か入ってたんだと思うよ!」
ストラップを渡そうとしてくれた親子が教えてくれた
ぬいぐるみの中に…固いもの…?
「恐らく極秘のデータとかが入ったUSBメモリーが仕込まれていたんですよ!」
光彦はそう言うが、わざわざサッカースタジアムの売店のストラップで取引とかするのかな…
「実はグッズは売り切れてて、見本品を灰原さんが店員さんにお願いして売ってもらったんです!」
なるほど…見本品での取引でならありえなくもない話だ
見本品を手に取ってぬいぐるみの中に何かを仕込み、売り切れたところで別の誰かが見本品でいいから売ってくれと頼めば取引は成功する…
同じ考えをした零が子ども達に説明をしてくれたので後に続く
「ところが哀ちゃんがその見本品を先に買っちゃって、取り戻そうとして跡をつけていた。電車で落ちたストラップを拾ったけど、それは別のストラップ。とりあえず落し物総合取扱所に届けに行ったところにオレ達がやってきてつけられてたって感じかな…」
「目当てのストラップを探してくれそうって思ったんだろうね…奪う機会を狙ってたってところかな?」